米国や東南アジアで人気のピックアップトラックを日本にも導入する動きがじわりと広がっている。トヨタ自動車、ステランティスジャパン(打越晋社長、東京都港区)に加え、三菱自動車も「トライトン」を2024年初頭に発売する。日本では存在感が薄いが、トヨタが17年に発売した「ハイラックス」は若年層の一部に支持されており、6月までに約4万7千台を販売。モデルチェンジに伴い新規受注を停止していたが、28日までに受注を再開した。価値観が多様化する中、三菱自の参入で市場がどう動くか注目される。
ピックアップトラックの最大市場は米国だ。民間調査会社によると、22年のピックアップトラックの販売台数は約273万台で、新車販売全体の約2割を占めた。車種別の販売ランキングでもフォードやシボレー、ラムのピックアップトラックが上位を独占する。この市場を逃すまいと、日本メーカーもトヨタ「タンドラ」「タコマ」、日産「タイタン」「フロンティア」、ホンダ「リッジライン」とラインアップをそろえ、販売に力を入れている。
全長6㍍前後のフルサイズが人気の米国と異なり、東南アジアには5㍍台前半のミドルサイズを中心に一定の需要がある。特に市場規模が大きいのはタイで、22年は約45万台を売った。全セグメントを含めたモデル別のランキングでも、いすゞ自動車の「D―MAX」が首位だ。もともとは農業事業者などの「ワークホース」用途が中心だったが、近年は乗用ニーズも拡大しており、メーカー各社はデザインや運転支援機能などで販売を競う。
一方、日本ではモータリゼーション(自動車の大衆化)前後の70年代ごろまで「サニートラック」など小型のピックアップに商用車として一定の需要があったが、その後の販売は年を追うごとに減り、トヨタが13年ぶりに国内導入する前は正規で購入できるピックアップトラックが1台もなかった。トライトンの再導入を決めた三菱自も、06年から日本で販売したが、11年に販売を打ち切っている。
ただ、独特の外観に加え、利便性や悪路走破性の高さなどでアウトドアを嗜好するユーザーの潜在需要もあった。トヨタのハイラックスは発売後、年間6千台程度を販売する。21年11月末にステランティスジャパンが発売したジープ「グラディエーター」も、初期配車分の400台を約4カ月で売り切り、その後も堅調な売れ行きだ。
三菱自が26日にタイで発表した6代目のトライトンは、エンジンやシャシーを大幅に改良し、走行性能などを高めるとともに運転支援機能などを拡充した。日本にはファミリー層の需要を狙い、ダブルキャブの4WD仕様のみを導入する。旧型よりも全長を15㍉㍍、全幅を50㍉㍍延ばした点については日本で評価が分かれそうだが、系列販売会社にとってラインアップが増えることは確かだ。
もともとの市場規模が大きくないだけに、〝後追い〟のトライトンがどこまで売れ行きを伸ばすかは未知数だが、オフロード車のイメージが強い三菱自の本格ピックアップトラックを待望する声が根強いのも事実だ。ヒット車「パジェロ」の販売を終えた三菱自にとっては、ブランドイメージをけん引する広告塔としも役割も担うことになりそうだ。