FCAジャパン(ポンタス・ヘグストロム社長、東京都港区)は、ジープブランドから国内初のピックアップトラックとなる「グラディエーター」を投入した。2021年11月30日の予約受け付け開始から約10日で100台超の受注を得るなど、比較的ニッチなピックアップトラック市場で一定の需要を掴んだ。ベースとなる「ラングラー」譲りの大柄なボディーは悪路走破性と積載性を両立した本格オフローダーで、国内市場で先行するトヨタ自動車「ハイラックス」の対抗馬となるかにも注目が集まる。

グラディエーターは50年超の歴史を持つジープのピックアップトラックで、現行型は米国で18年に発表された。当初は市場が小規模なことから「日本で展開する予定はなかった」(マーケティング本部の渡邊由紀プロダクトマネージャー)が、導入を求めるユーザーの声を受けて方針を転換した。

並行輸入車の多さも導入を決める契機となった。渡邊マネージャーによると、「本国での販売から間もなく、日本でも並行輸入車を多く目にするようになった。ヘビーユーザーを中心に一定程度の認知を得ていたことが背中を押した」という。一方で、並行輸入車は外装色の選択肢に乏しいケースが多く、正規販売店で受けられるメンテナンスサービスにも限りがあるなど、インポーターが正規輸入する車両に比べてデメリットも少なくない。正式発売に当たっては、外装色は9色、内装色は2色の組み合わせを用意するなど、顧客が多様な選択肢の中から安心して選べる環境を整えて並行輸入車と差別化した。

発売に先駆けて同社がウェブ上で実施したアンケート調査では、購入を希望する人のうち約半数がジープ車以外のオーナーだったという。「ラングラー同様、アウトドア志向の30、40歳代を中心に引き合いは強い」(同)と見る。21年12月上旬時点で130台ほどの予約受注を獲得するなど、出足は好調だ。

今後は順次納車するとともに、全ての系列ディーラーに1台以上の展示車または試乗車を配備して本格的に訴求していくほか、限定車の投入なども模索する。「ユーザーが街を走らせること自体が広告の役割を果たす特別なクルマ。爆発的に売れるわけではないが、ブランドの象徴として育てていく」(同)と意気込む。

かつては日産「ダットサン」や三菱自動車「トライトン」など、国内市場でも各社がピックアップトラックをラインアップしていたが、足元で新車販売されるのはハイラックスのみ。グラディエーターはハイラックスよりも一回り大きく、価格もハイラックスが352万7000円からであるのに対してグラディエーターは2倍超の770万円からとなる。市場をどの程度取り込めるかは未知数だが、悪路走破性や積載性、何より個性を求めるヘビーユーザーにとっては選択肢が広がった格好だ。