固体電解質の小型実証設備第1プラント(千葉県市原市)

 出光興産は、全固体電池向け固体電解質の量産を2027年にも始める。まずは実証プラントの生産能力を足元の数倍に引き上げると19日に発表した。同社の主力である国内の燃料事業は電動車シフトで長期的に縮小が避けられない。石油精製で培った原料技術を生かし、新規事業として需要が広がる固体電解質事業の確立を目指す。

 現在の車載電池は液系リチウムイオン電池(LIB)が主流だが、発火リスクが低いことや、エネルギー密度が高く航続距離が延びるなどの利点があり、ポストリチウムイオン電池として全固体電池の実用化が期待されている。政府の「蓄電池産業戦略」では、30年頃の実用化を目標に掲げており、トヨタ自動車は27年にも全固体電池を搭載したEVを投入する方針だ。

 車載電池の量産では中韓勢のシェアが高いが、日本は負極材や正極材などの電池材料開発で強みを持つ。出光も1990年代前半から全固体電池の中間材料である「硫化リチウム」の開発に取り組んできた。硫化リチウムは、原油を石油製品に精製するプロセスの中で「副生ガス」として得られる。21年には固体電解質の商用化に向け、実証設備を稼働させた。

 今回、生産能力を増強するのは、千葉県市原市にある小型実証設備第1プラント。投資規模や生産能力などは非公開だが、「(投資が完了すれば)生産能力は数倍規模になる」(小林城太郎執行役員)という。27年の量産開始に向け、量産技術の確立を急ぐ。