テクニカルワークショップ2023で公開した開発中の技術

 トヨタ自動車は、航続距離を2倍に延ばし、コストを2割下げた新型の車載電池を2026年発売の次世代電気自動車(EV)に搭載する。コストをさらに下げたバイポーラ(双極型)電池や全固体電池など3種類の新型電池も28年までに実用化する。生産技術では、車体を一体成型する「ギガキャスト」を導入する。トヨタはEV販売を30年に350万とする目標を掲げる。このうち半数(170万台)を次世代EVとする。

 12日までに東富士研究所(静岡県裾野市)で「テクニカルワークショップ2023」を開き、開発中の技術を報道関係者などに公開した。トヨタは、世界の国・地域で実効性の高い脱炭素化を進めるためパワートレインの全方位戦略を掲げている。今回は、EV開発組織「BEVファクトリー」と、水素関連事業を取りまとめる「水素ファクトリー」の先進技術を紹介した。

 EV関連では、開発中の車載電池4種類を披露した。次世代EVに搭載予定の「パフォーマンス版電池」はセル(単電池)の材料や形状を改良し、「bZ4X」比で航続距離は2倍、コストは2割減、充電時間は世界トップ水準の20分程度を実現するという。

 また、bZ4X用よりもコストを4割下げたバイポーラ型の「普及版」電池を26~27年に実用化する。ハイブリッド車(HV)で培ったバイポーラ型ニッケル水素電池の技術をリチウムイオン電池にも応用し、コバルトなどの三元系ではなく、リン酸鉄系(LFP)の正極材も採用する。パフォーマンス版と普及版を融合させた電池も28年までに実現する。HVから採用する計画だった全固体電池は、課題だった長寿命化のメドがつき、EV向けを想定して27~28年の実用化を目指す。中嶋裕樹副社長は「エンジン同様に電池も多様な顧客ニーズに対応できる選択肢が必要だ」と語った。

 生産技術では、これまでプレス部品を溶接などでつなぎ合わせていた前部や後部の車体を鋳造で一体成型するギガキャストを次世代EVに採用する。この技術では米テスラが先行するが、トヨタは金型をモジュール(複合部品)化したことで生産性を2割高め、生産工程を半減させる。車両を自走させて搬送コンベアをなくすなどの工夫も採り入れ、設備投資を半減させる。

 水素関連では、次世代FC(燃料電池)スタックを公開した。独自の計測・解析・予測技術を駆使し、セルの出力密度を現行モデル比で3割高め、コストは半減させるという。高圧水素タンクは円筒形以外の形状にも挑戦し、車両開発の自由度を高めていく。