サーキット走行中のまばたきには類似性があった

 NTTは、サーキットを高速周回するドライバーの瞬目(まばたき)がコース上の特定位置で生じることを世界で初めて発見したと発表した。人の認知状態を読み取る手法につながる可能性がある。

 競技車両を用い、サーキットを走行中のドライバーのまばたき状態を車両の位置や挙動と同時に計測した。一般にまたばきは1分間に約20回起き、1回につき0.2秒ほど視覚が遮られる。超高速でサーキットを走るドライバーにとって、まばたきによる影響は無視できない。また、運転中のまばたきはこれまで、ランダムに起きていると考えられていた。

 計測の結果、ドライバーはコース上の特定の位置付近でまばたきを繰り返し、周回を重ねても、同じ位置でまばたきする確率が高いことを発見した。また、まばたきのパターンには、ドライバーの生理学的要因と運転行動に伴う認知状態の変化が関与していることも明らかにした。

 ドライバーによって平常時のまばたき頻度は異なるものの、コース上のまばたき位置は類似しており、車両加速度が小さい時に偏っている。車両が急減速したり、横方向に加速度がかかっている場合はまばたきを抑制する傾向が強いこともわかった。時速300キロメートル付近から急減速し、コーナーに進入するところでまばたきが止まり、コーナーを抜けて次のセクションに向かうところで集中的にまばたきが発生したという。

 また、ラップタイムが早い時ほどまばたきパターンが明確で、ドライバーの運転への集中度がまばたきパターンに反映されていると推定する。

 NTTは今回の研究で、激しい振動や大きな加減度、瞬間的な明暗の変化といったサーキットでの過酷な運転環境下でも、まばたきパターンを通じて人の認知や心理状態の変化を捉えることが可能であることが示されたとし、「まばたきパターン」というバイタル(生体)指標が、実環境で人の認知状態などを読み取る新たな道を拓く可能性が広がるとしている。