「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」では、車載システムや電源などを支える半導体も主役。半導体不足から自動車メーカーが減産を強いられるなど改めて注目されている中、最新の性能や生産能力などサプライチェーンへの貢献をアピールした。
「これは難しい課題ですね」。こう話したのは、ジヤトコの佐藤朋由・社長兼CEO。開発中のeアクスルの構成などを発表した後、パワー半導体、モジュール調達について記者から問われた場面だ。
かつて、半導体で世界の市場を引っ張った日本のエレクトロニクス企業が、この分野で存在感を取り戻すのは厳しい道だが、各社は車載半導体を次の成長分野とみて、自社や傘下企業で取り組みを進める。
東芝グループもその一つ。展示会初日には、車載半導体の取り組みに関する記者説明会をオンラインで開く熱の入れようだ。CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)のそれぞれに活用される製品群があり、傘下の東芝デバイス&ストレージが中心になる。
特に最近注目されているのは、電力制御などに使われるパワー半導体。たとえば、MOSFETは、簡単に言えばスイッチの役割を果たし、システムの中で電源をオン・オフする。その際の損失(ロス)を減らせる性能が、省エネの決め手になる。
海外勢も精力的だ。世界を代表する半導体企業のブースが通路を挟んで軒を並べたのが米テキサス・インスツルメンツ(TI)と、アナログ・デバイセズの日本法人。このうちTIは展示会直前、都内で車載事業に関するメディア向け戦略説明会も開いた。同社はグローバルで製造能力の増強に取り組んでいることを、ブースでも強調した。
同社は300ミリ(12インチ)と呼ばれる、大きなウエハーの製造工場の拡充を進めている。ウエハーは半導体モジュールの基板となるもの。半導体不足が課題になる中、増産にはウエハーをより大きくし、作れる半導体を増やすことが効果的とされるためだ。このため、従来の主流である200ミリ(8インチ)からの大口径化が課題となっている。
自動車メーカーや一次サプライヤー(ティア1)が、半導体メーカーと長期の供給契約を結んだり、協業したりする例が内外で相次いでいるのも、半導体確保が最重要課題の一つになっている事情がある。
「自社だけで完結できる時代ではない。自前までは考えていないが、パートナー企業から調達したい」。ジヤトコの佐藤社長はそう語り、パワートレインを手がける中で、半導体に引き続き注目していく姿勢を示す。自動車業界と半導体業界の関係から目が離せない。
(日刊電波新聞)
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