高砂製作所の「電力回生型ハイブリッド電源」(写真はEVバイクなど向けの定格出力電力10kWタイプ)
エー・アンド・デイは劣化電池を模擬する装置を出展
燃料電池セルを評価できる堀場製作所の装置

「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」では、電気自動車(EV)など車載電池を評価するためのさまざまな計測ソリューションが提案されている。

◆充放電試験に対応

車載用電池の高電圧化は、航続距離の延伸を目指す取り組みの一つだ。

一般的なEV用電池のパック容量は400V程度。航続距離を伸ばすため、800Vを超える電池の開発が活発化しており、高級車を中心に大容量化が進行している。

高砂製作所が手がける「電力回生型ハイブリッド電源」は充電と放電を繰り返して電池の性能を測る充放電試験で使う装置。電池に電気を供給したり、電池から電気を吸収したりすることができる。

出力できる電力は最大750V。直列で2台接続することで、合計1500Vの大容量を想定した電池評価に対応可能だ。

モーターやインバーターに電圧を投入して安定的に動作するかを見る特性試験も1台で行えるのも特徴だ。

◆充放電を制御

EVに搭載される電池管理システム(BMS)は、過充電や、逆に過放電することにより電池の性能が落ちないよう制御する役割を担う。

ただ、BMS自体の動作を検証するには劣化した電池を使うが、実際に劣化した電池を用意するのは容易ではない。約1年にわたり電池の充放電を行うなどして「劣化」を生じさせる必要があるためだ。電池の劣化状態を判断する指標としては、インピーダンス(交流での電流の流れにくさ、抵抗)が用いられる。

エー・アンド・デイが出展した「バッテリーエミュレーター」は電池内のインピーダンスの変化を模擬し、劣化した電池を仮想的に再現できる。つまり、本物の電池がなくても電池の開発・検証を進めることができる装置だ。

パラメーターを変えるだけで、例えば「インピーダンスが10%増加」といった電池劣化の状態をセルごとに設定できる。自動車部品の開発において、開発期間の短縮は電池でも大きな課題。エミュレーターの活用で、試験工数の大幅な削減が図れる。

◆燃料電池セルを評価

次世代電池として期待される燃料電池。堀場製作所は燃料電池セルを評価できる装置である「エバリュエーターシリーズ」を出展している。インピーダンスや電流電圧特性(IV特性)などから、固体酸化物形燃料電池(SOFC)や固体酸化物形電解セル(SOEC)の出力性能を評価できる。

同社は、2018年に独フューエルコン社を買収して燃料電池評価装置のラインアップをそろえた。エバリュエーターは欧州や日本の自動車メーカーに納入実績がある。

もともと電池の材料分析で実績のある同社。電池の高効率化を図り、安全性を担保するには素材・材料の評価も欠かせない。燃料電池の劣化につながる一酸化炭素や二酸化炭素など不純物の微量な濃度を測定するガス分析計や、電解質劣化の原因になるセパレーター(絶縁材)上の金属異物を検出するX線分析装置など多角的・多面的に電池を評価するソリューションを提供する。

(日刊電波新聞)

 

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