プロテリアルは電池やモーターなどの材料を訴求する

「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」では、電気自動車(EV)を支える電池関連の技術にも注目が集まっている。車載電池は従来、中国や韓国の企業がリードしているが、電池材料の技術などには日本に強みがある。内外で電池関連の投資への政策支援が打ち出されているだけに、各社は最新の取り組みを訴求する。 

プロテリアル(旧日立金属)はそうした1社。電池、モーター関連の素材を広く披露する。電池の性能を向上させる各種材料や、電源ノイズ対策部材、設備ユニットや加工サービスまでソリューションで提供する。最近では同社のように、素材を提供するだけではなく、ほかのサービスと合わせた、一貫して手がけるところが増えてきた。

また、同社は23日、リチウムイオン電池(LiB)のライフサイクルで、二酸化炭素(CO2)排出量を2割削減する技術も発表。今回は展示していないが、EVの製造プロセスでは、電池製造時のCO2排出量の割合が大きいことに対応したものだ。 特に正極材の原料が課題となっており、同社では製法を工夫し、原料に由来するCO2排出量の削減に成功した。 今後、電池メーカーや材料メーカーに製法を提供するなど、知財ビジネスを想定している。 

企画展示コーナーで、リサイクルを訴求するのはJX金属だ。最近、上場方針を発表した同社は、先端電子材料に使用する高品質な銅生産で知られるが、リサイクル技術に強みを持つ。この技術を生かし、グループのドイツ企業の拠点では車載用LiBのリサイクルについて、フォルクスワーゲン(VW)グループをはじめとした産学連携コンソーシアムに参画している。 

JX金属は、高品質な電池原料を高収率で回収するためのプロセスの最適化を強みとする。EVは欧州でもまだ普及途上であり、電池のリサイクル需要が本格的に立ち上がるのはまだしばらく先とみられる。それでも、今のうちに参画しておくことで「欧州市場での将来の布石に」とする狙いがある。 

電池材料の確保に各社が力を入れる背景には、材料の供給不足が懸念されている事情がある。ウクライナ情勢などサプライチェーンの課題が顕在化し、レアメタルが高騰している中、リチウムなどの確保競争が激化している。テスラもこの分野に意欲を示しているなど、「電池材料、電池の生産が、EV全体の生産動向を規定しかねない状況」(研究者)とされる。 

(日刊電波新聞)

 

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