刷新した電気炉

 愛知製鋼は16日、ステンレス鋼材の供給能力を2026年度までに現状から40%増強した年間9万トンまで引き上げると発表した。第1弾として約10億円を投じ、ステンレス鋼用電気炉を刷新した。今後、生産性向上や設備増強などで供給能力を引き上げていく。愛知製鋼は高圧水素用ステンレス鋼を展開しており、燃料電池車(FCV)向けなどの需要拡大に対応する。

 現在のステンレス鋼材供給能力は約6万トン。供給能力強化に向け、知多工場(愛知県東海市)にあるステンレス鋼用電気炉「50トン溶解炉(1号電気炉)」の炉殻や制御システムの更新を1月に完了した。23年中に鋼材の形状を加工する圧延ラインの生産性向上、26年中には精整ラインの設備増強や整流化を図り、3段階の製造プロセス改革を進めて年間供給量9万トン体制を構築する。

 水素は鋼材に侵入して強度を低下させる「水素脆化(ぜいか)」を引き起こす。同社のステンレス鋼材は高圧水素用に開発し耐久性を高めており、トヨタ自動車のFCV「ミライ」向け部品をはじめ、水素ステーションの充てんノズルなどにも利用されている。脱炭素化に向けた次世代エネルギーの本命とされる水素の普及を見越し、ステンレス鋼材供給能力を引き上げる。