ホンダは2日、2020年代半ばに燃料電池(FC)システムの外販を始めると発表した。当初は年間2千基を販売し、30年に6万基、30年代後半に年間数十万基へと規模を増やしたい考えだ。自動車用のほか、定置電源や建設機械などの需要を見込む。同社はまた、生産性の改善や白金の使用量削減、量産効果などでシステムコストを燃料電池車(FCV)「クラリティ」に搭載した第1世代のシステムに比べ、30年頃に6分の1にする目標も示した。

 ゼネラル・モーターズ(GM)と共同開発中の第2世代のFCシステムを外販する。電極に「革新材料」を用いたり、セル(単電池)シール構造の改良、補器類の簡素化などで、クラリティに搭載した第1世代と比べて耐久性を2倍、コストを3分の1に抑える。24年に「CR―V」のプラグインハイブリッド車(PHV)をベースにしたFCVに搭載して日米で販売する一方、外販も始める。

 外販用途として有力視するのは商用車だ。今年1月には中国の東風汽車と共同で次世代FCシステムを搭載した商用トラックの実証を中国湖北省で始めたほか、23年度内にはいすゞ自動車と燃料電池大型トラックを使用した公道実証も始める。こうした実証の成果も踏まえ、さまざまな企業にFCシステムを提案していく。トラックのほか、データセンターの非常用電源、ショベルやホイールローダーなど建設機械向けにも販売していきたい考え。

 第2世代システムの外販と同時に、20年代後半にも実用化する第3世代システムの開発も進める。第2世代と比べてさらにコストを半減し、耐久性も2倍に高める。目標どおりに開発が進めば、ディーゼルエンジンと同等のコストでFCを利用できるようになるという。

 現在、ホンダの水素関連事業は利益貢献までに至っていないが、青山真二取締役執行役専務は「30年までには事業として成立する」と語った。