トヨタの水素貯蔵モジュール
ホンダの定置型電源

 トヨタ自動車とホンダが自動車以外への燃料電池(FC)技術の導入を狙った取り組みで成果を出し始めている。トヨタでは2021年にFCモジュールを発表し、これを活用した実証実験が鉄道、船舶など自動車以外のモビリティで始まっている。ホンダは可搬型電源や定置型電源としてのFC活用の可能性を、共同研究などを通じて探っている。幅広い業種や製品でFC技術の活用を模索する。

 トヨタは他社へのFC技術の提案を積極化している。FCスタックに昇圧コンバーターや冷却用ポンプ、エア供給用コンプレッサーなどを組み込んだ外販用のFCモジュールを開発し、提供を始めた。

 加えて、燃料電池車(FCV)「ミライ」の高圧水素貯蔵技術を応用した「水素貯蔵モジュール」を18日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「FCエキスポ」で初披露した。トヨタはこれらの技術を、自動車業界以外にも提供することにより、水素社会の構築に結び付ける。

 トヨタでは「FCエンジニアリングサービス」を展開しており、船舶や鉄道事業者向けへの提案に注力している。FCシステムに興味を持つ企業に向け、導入検討からアフターサービスまでを支援する。「各業界のトップから問い合わせが増えている」(担当者)といい、水素技術の扱い方を学びたいといったニーズが増えているという。

 一方で、ホンダはFCV「クラリティフューエルセル」のFCパワーユニットを使った可搬型電源や20年からいすゞ自動車と共同で開発しているFC大型トラックなどでFCV技術を活用する機会を広げている。

 同社は、米国現地法人のデータセンター向けの非常用電源として、非常用FC定置電源の実用性を検証する。ホンダもFCVで培った技術を多用途で展開しようとしている。