日産自動車は21日、整備費用や任意保険料などを組み込んだサブスクリプション(定額利用)型の個人向けリース「おまとめプラン」を発売したと発表した。系列の販売会社で取り扱う。これまでサブスク商品はオンライン展開だけだったが、新商品により販社の店頭でも提供できるようになった。日産販社での金融商品は残価設定型クレジットの〝一本足打法〟になっていたが、リース商品の拡充でユーザーや販社の選択肢を広げる。また、きめ細かく車両が管理できるリースは電気自動車(EV)との親和性が高く、販社でのEV販売の後押しにもつなげる。

 新商品は、これまで店頭で取り扱っていた「日産マイリースプラン」を刷新して展開する。車検や点検の費用に加え、新たに夏用タイヤやワイパーをはじめとする消耗品の費用も月額料金に組み込むなど、メンテナンス内容を拡充した。契約期間は3年、5年、7年から選択できる。5年契約では3年経過時に所定の手数料を支払えば、乗り替えられるオプションも新設した。月額料金は「ノート」の前輪駆動モデルの3年契約で、5万1100円(消費税込み)など。新商品の運用は日産フィナンシャルサービス(風間一彦社長、千葉市美浜区)が担う。

 日産は2020年3月から、オンラインで申し込みを受け付ける個人向けリース「クリックモビ」を提供している。今年8月には月額料金に任意保険料も組み込み可能とするなど、月々の費用負担を明瞭化した〝サブスク〟型のパッケージとして展開してきた。しかし、オンライン手続きの簡便さを優先し、対象のグレードやオプションを限定している。一方、新プランはクリックモビと同等のサービスを提供しつつ、原則すべての仕様を選択可能とした。ユーザーニーズに適した車両を選びやすくすることで、契約拡大に弾みをつける。

 同社では新商品の投入で、サブスク商品で先行する競合他社の巻き返しにつなげる。トヨタ自動車は19年7月に「KINTO(キント)」の本格展開を開始し、将来的に新車販売に占める比率を10%超に引き上げる目標を掲げている。このほか、インポーターやリース専業者からも、新たな個人向け商品の投入が相次いでいる。金融商品を充実することで、日産の系列販社の販売力を底上げする。

 また、EVをはじめとする次世代車は、駆動用電池の経年劣化によって残存価値が見通しにくい課題を抱えている。サブスクなどのリースは契約満了後に、確実な車両回収を見込めることから、販売側が主体的に残価を設定しやすい。こうした利点を生かし、販売店での積極的なEV提案に結び付ける考えだ。