さまざまなアングルから楽しめる「トヨタ7」
1920年代の「サンビーム・グランプリ」は4台製造されたうちの1台
「ホンダRA272」(右)は、F1参戦2年目のホンダに初勝利をもたらした
ル・マンで活躍した「マツダ787B」(左)と「トヨタGT-One」
ヤマハ発動機のエンジンなど、レースを支えた各種のパーツも展示

 富士スピードウェイ(静岡県小山町)に7日、富士モータースポーツミュージアムが開館した。トヨタ博物館(愛知県長久手市)が監修し、国内外の自動車メーカー10社の連携により、約40台の車両を展示。中には本格公開が日本初となる貴重な車両も含まれている。「モータースポーツがクルマを鍛え、進化させた熱い歴史をたどる」というコンセプトのもと、クルマづくりにモータースポーツが果たしてきた役割を伝える内容で、130年に及ぶレースの歴史や自動車技術の進化を実車やパーツを見ながら深く味わえる施設だ。

 ミュージアムは同日開業した「富士スピードウェイホテル」の1、2階にオープンした。1階では、床面に垂直に立てられた「トヨタ7」(レプリカ)が目を引く。普段は見られないアングルから車両を眺められるだけでなく、タイヤに負荷がかからない展示方法により、50年間倉庫に眠っていたタイヤを装着しての展示が可能となった。トヨタ7は、1969年の日本カンナム優勝車両も通常の展示エリアで確認できる。

 展示エリアは15テーマに分かれており、1番目のエリアの「モータースポーツのはじまり」から順を追って、車両やエンジン、タイヤなどのパーツ、関連資料をたどることができる。1800年代末には、自動車の動力源として蒸気機関、電気モーター、ガソリンエンジンの3種類が研究され、後発のガソリンエンジンの評価は高いものではなかったが、レースで好成績を収めることにより、優位性が知られるようになったという。第一次世界大戦の終結後には、航空機エンジンで培った技術が自動車にも還元され、進化が加速した。

 「メルセデス・ベンツW25」は、レプリカながらオイルの付着具合までリアルに再現したものだ。レースに参戦するための規定重量750㌔㌘を1㌔㌘オーバーしてしまい、白い塗装を急遽はがして参戦したという逸話が残る。愛称「シルバーアロー」の由来になった興味深い車両だ。

 2階はラリーやF1(フォーミュラ・ワン)、NASCARに参戦した車両など、より現代に近いラインアップとなっており、1974年のサファリ・ラリー優勝車である「三菱ランサー1600GSR」や、日本車およびロータリーエンジン搭載車として初のル・マン制覇を果たした「マツダ787B」(レプリカ)など、世界を席巻した日本車の数々も展示されている。

 締めくくりとなる15番目のエリアでは、電気や水素、バイオ燃料など、自動車の動力源が再び議論されるようになった現代におけるモータースポーツの挑戦に焦点を当て、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)への取り組みも紹介する。

 布垣直昭館長は「ゆくゆくは展示車両をコースで実際に走らせるなど、この場所ならではのイベントも実施できれば」と語る。サーキットに隣接するミュージアムとして、独自の体験価値を生み出す展開が期待される。

(堀 友香)