住友ゴム工業は5日、リチウム硫黄電池材料に用いる硫黄化合物の可視化に世界で初めて成功したと発表した。今後、リチウム硫黄電池の反応や劣化メカニズムの解明、タイヤの性能を維持する技術への応用につなげる。

 硫黄はタイヤの基本性能や性能の持続性に影響することから、同社は研究に着手し、2011年からは産業技術総合研究所と共同で、リチウム硫黄電池の研究に取り組んできた。今回、同電池の課題である充放電サイクル寿命を向上するため、東北大学や理化学研究所、高輝度光科学研究センターと共同で、物質の構造と化学結合状態をナノレベルで計測可能な技術を確立した。

 具体的には硫黄化合物にテンダーX線を照射し、得られた「X線回折強度イメージ」を計算、X線の吸収・位相イメージを作り出す。これをエネルギーを変えて繰り返し、30点ほどの画像を組み合わせることで、硫黄化合物の化学結合状態を可視化するのに成功した。

 同社は今回の計測技術を2024年運用開始予定の次世代放射光施設「ナノテラス」で活用し、リチウム硫黄電池動作環境下での計測と材料開発の早期実用化に取り組む。また、タイヤでもゴムと硫黄が結合した架橋構造の分析に今回開発した技術を応用することで、性能を維持する技術の開発にもつなげていく構えだ。