日本製鉄は異なる強度と異なる厚みのアルミめっきホットスタンプ鋼板を、高い寸法精度、高い生産性で製造できる技術を開発したと発表した。この技術を使って1.8ギガパスカル(GPa)級と1.3GPa級のアルミめっきホットスタンプ鋼板をレーザー溶接で一枚の鋼板に接合した上でプレス加工したBピラーがマツダのSUV「CX─60」に採用された。

 鋼材を加熱してから金型で冷却して焼入れするホットスタンプ材は高強度で、冷間プレスでは難しい複雑な形状の部品を製造できるものの、冷却時間が長く生産性が低いことが課題だ。今回、金型表面と鋼板のすき間に冷却水を流すことで焼入れの所要時間を短縮できる直水冷ホットスタンプ工法を開発した。

 金型内の流体解析で冷却水の流速を制御、焼入れ性や寸法精度のバラつきをなくし、部品製造時の生産性を従来と比べて4倍向上したという。製造時の温室効果ガス排出量も削減できる。

 また、日鉄の九州製鉄所八幡地区で、強度や板厚の異なるアルミめっきホットスタンプ鋼板をレーザー溶接で接合する独自のテーラードウェルドブランク(TWB)技術も開発。従来、アルミめっきホットスタンプ鋼板をTWB技術で接合すると溶接部にアルミが混入して、ホットスタンプ後の接手強度が低下するほか、異強度・異厚の接合では部品の寸法精度にバラつきが生じていた。

 Bピラーは衝突時に車室内空間を保護する部材。CXー60向けには上部を1.8GPaの高強度材料、下部に1.3GPaの低強度材料を採用した。また、衝突変形時の曲げ強度を向上するため、主要骨格部品に補強部材を後から接合するのでなく、稜線部に最適な板厚にした補強材を事前に接合してからホットスタンプで加工する。レインフォース部品の削減によって34%軽量化しながら衝突安全性の向上を実現したとしている。