旭化成は11日、2025年3月期の連結営業利益2700億円、ROIC(投下資本利益率)8%以上を目指す新中期経営計画を策定したと発表した。30年ごろを見据え、自動車内装材や電動車向け事業など、次の成長が見込まれる分野に重点投資して、付加価値の高い事業に重点を移すなど、事業ポートフォリオを転換する。
30年ごろ、同社の営業利益全体の7割を占めると想定する自動車内装材や蓄エネルギーなど、次の成長をけん引する10の事業を設定した。これらの分野に3年間で合計約6千億円を投資する計画だ。
モビリティ事業では、自動車内装材関連と電気自動車(EV)向け製品展開での成長を目指す。環境対応技術を高度化するなどして人工皮革ナンバーワンブランドを目指す。米子会社のセージは20年に買収したアディエントのファブリック事業を活用してシェアアップを図り、24年度に売上高を21年度比25%増となる1千億円以上に伸ばす。
EV向け製品では自動車メーカーの開発パートナーとして、リチウムイオン電池の軽量化や安全性向上などに寄与する素材の提供拡大を図る。リチウムイオン電池のセパレーターは、22年度中に立ち上がる日向工場の稼働後も供給能力が不足する可能性があることから、さらに生産能力の増強を視野に入れる。
また、50年のカーボンニュートラル実現に向けて30年度は温室効果ガスの排出量を13年度比3割削減する。
一方、旭化成の工藤幸四郎社長はオンライン会見で、20年10月に火災が発生して操業停止の状態にある宮崎県延岡市の半導体工場について「全く同じ製品を作ることは極めて難しい」と述べ、今後、半導体生産拠点の新設も検討する方針を示した。