利用者は後列の2席に乗車する
ウェブ会議用の装備を充実させた車内

 日産自動車とゼンリン、ソフトバンクなどの5社は17日、東京都と神奈川県の一部地域を対象に車内でウェブ会議が行える有償ハイヤービジネスの実証実験の第2弾を開始したと発表した。9月30日まで実施する。第1弾は無償で実施したが、今回は有償で行うことにより、収益性なども検証していく。さらに稼働日を土日に広げたことで、休日のイベント利用の可能性も探る。各社は今回の実証実験を踏まえ、2023年以降に本格的な商業展開を目指す考えだ。

 実証実験には大日本印刷(DNP)とハイヤーサービス事業者のクワハラ(桑原義和社長、横浜市旭区)も参画する。車両は前回と同様、車内で移動中にウェブ会議が行えるよう装備や通信環境を整えた日産「エルグランド」を使う。車内には32㌅の液晶モニターやDNPが開発した運転手と連絡を取るためのダブレット型のコミュニケーションツールを用意した。ウェブ会議用の通信はソフトバンクの通信回線を使用し、第5世代移動通信システム(5G)にも対応する。運転席側と利用者が座る後席との間には遮蔽(しゃへい)壁を設け、プライバシーにも配慮した設計となっている。

 昨年6~9月に実施した第1弾の実証実験では、利用を平日に限っていた。今回、土日も行うことで、一般的なビジネス客だけでなく、観光や婚礼イベントといった新たな利用目的のユーザーの開拓にもつなげたい考えだ。

 有償化については第1弾の利用者アンケートで、有償でも利用したいというニーズが一定程度確認できたため。第2弾を通じて、実際に利用者がいるか検証する。利用料金は1回あたり2万円(消費税込み)から。1回の乗車定員は2人まで。営業区域は東京23区内と横浜市、川崎市、横須賀市で、利用者は電話とメール、ウェブのいずれかで予約する。

 長期化するコロナ禍により、電車やバスなどの大勢で移動する公共交通機関での移動を避けるといった動きが一部で広がっている。日産など5社はこうしたニーズにも応えつつ、既存のハイヤー事業者とも差別化できる新たなビジネスモデルの確立を目指していく方針だ。