トヨタ自動車は9月10日、今期生産台数の見通しを約930万台から900万台程度に下方修正すると発表した。9月に続き、10月も計画比で約4割減の減産に踏み切る。自動車業界の中で比較的、サプライチェーン(供給網)をつないできたトヨタだが、長期化する新型コロナウイルス感染拡大や半導体不足の影響に抗しきれなくなりつつある。ただ、連結業績予想(売上高30兆円、営業利益2兆5000億円)は変えず、巻き返しの機会を伺っている。

9月は、先月19日公表分の約36万台に約7万台(海外4万台、国内3万台)を追加減産し、10月は国内外で約33万台(海外18万台、国内15万台)を減産する。8月以前の生産計画と比べ、それぞれ4~5割の大規模な減産だ。

今回の減産もこれまでと構図は同じで、主にマレーシアやベトナムで新型コロナ感染拡大の影響が長期化し、複数の仕入れ先で稼働率が回復しないことと、半導体の需給が逼迫していることが主な理由だ。東南アジアでは州や都市レベルで企業活動や生活が頻繁に制約されており、部品メーカーの操業が安定しない状況が続く。半導体不足も調達の混乱に拍車をかけている。

熊倉和生調達本部長は「先の見通しは不透明だが、代替生産や柔軟な生産計画を組み合わせ、1台でも多くお客様に車をお届けするため、できる限りの対策を進めていく」とオンラインで語った。ただ、年度後半はもともと高水準の生産計画を立てており、どれぐらいの増産余力が残されているか懸念も残る。

大規模な減産にもかかわらず、今期の業績予想を変えなかったのは、もともと一定の減産リスクを織り込んでいたことに加え、利益面では為替が予想より円安に振れたり、新車不足で販売店に支給するインセンティブ(販売奨励金)が減っていることなどが理由に挙げられる。ただ、新型コロナ感染拡大や半導体不足の先行きはなお不透明だ。新車需要は旺盛ながら、今期の業績は供給力をどこまで保てるかにかかっていると言えそうだ。