新たに開発したEV充電技術のイメージ

 日立製作所は25日、電気自動車(EV)用充電インフラの小型・軽量化と、急速充電から複数台充電まで対応する充電技術を開発したと発表した。新たに小型の半導体変圧器を搭載した350キロワットのEV充電システムを試作。充電設備(電力変換器と変圧器)の設置面積を40%、重量を70%削減することに成功し、業界トップクラスの小型・軽量化を実現した。今後、信頼性試験などを進め、早期の実用化を目指す。

 試作した充電システムでは、パワー半導体を使って変圧器を高周波駆動させることで小型化する半導体変圧器を採用した。従来のSi(シリコン)と比べて高温、高電圧環境下などでの性能に優れるSiC(シリコンカーバイド)を用いることで、駆動周波数をこれまでの約1千倍に向上。伝送可能な電力を増大させ急速充電を可能にした。

 急速充電と複数台充電を切り替えられるマルチポート技術を搭載したことも特徴だ。電力変換ユニットを7段接続することで、6・6キロボルトの入力電圧を分担するマルチレベル回路を開発。充電電力とポート数を柔軟に変更できるようにした。

 普通充電(17キロワット)であれば21台、急速充電(50キロワット)であれば7台のEVを同時に充電できる。さらに350キロワットの超急速充電にも対応できる拡張性も備えており、今後普及が進む大容量バッテリーを搭載するEVの充電ニーズにも応える。

 EVの本格普及には充電器の拡充が欠かせない。特に充電時間を短縮する急速充電器の設置が求められている状況だ。ただ一方で、急速充電対応には設備が大型化してしまうため、設置場所が限られる集合住宅やビルなどに設置することが難しかった。

 同社は今回開発した充電技術の早期実用化を進め、充電時間の短縮や複数台充電、充電設備のさらなる小型化などを通じて、EV充電器の設置拡充に寄与していく。