「まずは商用車用が大きなポイントになる」とマンダリ・カレシーバイスプレジデント
米カーメラと東京で実施した実証実験の様子

 年率3割以上の市場拡大が期待される自動運転車用の高精度地図(HDマップ)で、トヨタ自動車傘下のウーブン・アルファが競合とは異なる事業モデルを描いている。他のHDマップのような精度を追求しない半面、低コストで地図の〝鮮度〟を保ち、応用サービスを多く生み出して共存共栄を目指す作戦だ。開発チームを率いるマンダリ・カレシーバイスプレジデントは「まずは商用車用が大きなポイントになる」と話す。

 一般的なHDマップはセンサーを搭載した測定車を走らせ、道路や白線、道路交通施設や建物など「地物」の形状や座標を正確に記録してつくる。日本の場合、自動車や地図会社が出資するダイナミックマップ基盤(DMP、稲畑廣行社長、東京都中央区)が高速道路の地図をつくり終え、日産自動車「プロパイロット2・0」やホンダ「センシングエリート」向けとして、すでに使われ始めた。ただ、街や道路は常に変わっていく。管理者が限られる高速道路はともかく、一般道すべてを一定の頻度で更新する実用的な技術はまだない。

 ここに斬り込むのがウーブンのAMP(オートメイテッド・マッピング・プラットフォーム)だ。衛星や航空写真から基礎地図をつくり、自動車のADAS(先進運転支援システム)センサーやドライブレコーダーからの情報を集めて更新していく。精度は測定車方式より劣るが、広範囲の地図生成や更新がより低コストで可能になる。

 ただ、多種多様なデータから通信コストを抑えて効率的に地図を生成・更新する技術はまだ開発途上だ。ウーブンはこうした技術に強みを持つ共同開発先の米カーメラをこのほど買収、開発を加速させる一方で、いすゞ自動車や日野自動車、三菱ふそうトラック・バスとAMPで協業を始めた。自動運転だけでなく、使用過程車の運転支援も含めて実用化を探っている。

 AMPは、名前の通り地図のデータベースではなくプラットフォーム(情報基盤)であることも特徴だ。カレシーバイスプレジデントは「自社データをAMPにアップロードすることで独自の地図を生成できたり、解析して必要な情報を取り出せたりする」と説明する。他の地図会社のように地図データを切り売りするのではなく、他社がAMP経由で新たなサービスを提供するなどの事業モデルを想定する。

 蘭トムトムや独ヒアにも在籍したカレシーバイスプレジデントは「地図業界ではそこが難しい。切り方しだいだが、そういう意味での競合はあまりないのではないか」と話す。既存のHDマップと必ずしも競合するわけではなく、実際にDMPとは更新技術の実証で組む。カーメラの買収で今年中に進出するめどが立ちつつある米国にはDMP子会社の米アシャーもあり、AMPの商機は広がる。

 米調査会社「マーケッツ&マーケッツ」によると、自動車向けHDマップ市場は21年見込みの14億㌦(約1540億円)から30年には169億㌦(約1兆9千億円)に伸びる。ただし、地図や自動車、IT・半導体とプレーヤーは多彩で、勢力図はなお流動的だ。ウーブンは、トヨタ主導の商用車連合と同じように日本の物流業界でAMPの実装を軌道に乗せ、さまざまなサービサーを巻き込んで乗用車向けや米国などへとAMPを広げていく考えだ。まずは商用車向けサービスがその試金石になる。