21年4月に稼働したグジャラートC工場

 スズキは、新中期経営計画の最終年度である2025年度(25年4月~26年3月)に四輪車の世界販売台数を20年度実績と比べて4割増やす目標を掲げており、これに向けて主力市場であるインドを中心に生産能力を増強するなど、事業拡大に意欲的だ。スズキが海外に展開している製造拠点は新興国市場が中心で、市場の成長が期待される半面、カントリーリスクが高い。20年度の生産実績では、リスクが一部で顕在化した。それでも市場の成長に合わせて迅速に投資して基盤を固める戦略を貫く方針だ。

 スズキの20年度の世界生産台数は前年度比10・6%減の265万台と大幅に落ち込んだ。新型コロナウイルス感染拡大で昨年春、アジア地域の各都市で実施されたロックダウン(都市封鎖)により工場の稼働停止を余儀なくされたことが響いた。インドネシアやタイ、パキスタンが4割、ハンガリーが3割と、それぞれ前年度と比べてマイナスとなった。

 スズキの主力市場であるインドは同8・6%減の144万台と、1桁台のマイナスにとどまった。ただ、ロックダウンの影響から昨年4月と5月のインドの生産台数はほぼゼロだった。昨年6月に入ると同54・6%減と前年度の半分の水準にまで回復し、昨年8月には前年度を上回り、翌月には同月として過去最高となるなど、再び成長軌道に戻した。

 インド政府の経済対策などによって新車市場が急速に回復した。スズキは昨年7月、独自のサブスクリプションサービス「マルチスズキ・サブスクライブ」、昨年12月にはオンライン型の自動車ローン「スマートファイナンス」を開始するなど、販売テコ入れ策を展開したことで、インド国内市場向け生産が好調に推移した。さらに豊田通商がアフリカ市場で販売する「スターレット」を昨年9月から、「アーバンクルーザー」を21年3月から、それぞれスズキグループのインド工場で生産を開始したことで、生産台数が上乗せされた。

 今期に入ってからはコロナ禍を受けて稼働を延期していたスズキ・モーター・グジャラートのC工場を21年4月に稼働し、スズキグループのインドの生産能力を225万台に増やした。スズキでは、30年をめどにインドの新車市場が年間1千万台規模に成長すると予測する。その時点で新車販売規模を500万台と想定しており、これに向けてインドでの生産能力を増強する機会をうかがっている。

 また、インド政府は深刻な社会問題となっている大気汚染問題の解決に向けて自動車の環境規制を強化していく方針。スズキはこうした動きに呼応して、電動車のインドでの生産体制構築も急ぐ。

 インドに次ぐ規模のスズキの四輪車生産拠点である日本の20年度の四輪車生産台数は同1・5%減と微減ながら前年を割り込んだ。国内で主力の軽自動車では「スペーシア」、登録車では「ソリオ」などの生産台数が増加したものの、年度前半のコロナ禍による国内販売の低迷をカバーできなかった。国内生産は21年度に入ってからは半導体不足によって自動車の生産調整を実施している。21年4~6月期に半導体不足で国内だけで6万台を減産した。21年度では減産規模は25万台にまで増える見通し。

 半導体不足による生産調整は国内だけでなく、インドなど海外の生産拠点でも影響を受ける。21年度に海外だけで10万台の減産を強いられる見通し。さらに、東南アジアでの感染が再拡大していることや、政情不安で工場の稼働のめどが立たないミャンマー情勢など、懸念材料が山積する。

 スズキが今年2月に策定した21~25年度を対象年とする新しい中期経営計画では、四輪車の販売台数をコロナ禍前の19年度の285万台から25年度には370万台に引き上げる計画で、成長をけん引するのはアジアだ。市場の成長に即応して生産体制を増強する方針。また、半導体不足による自動車の生産調整を受けてサプライチェーンのBCP(事業継続計画)管理を見直すなど、安定した生産体制の構築に注力する構えだ。