ニッサン・インテリジェント・ファクトリーに導入する自動パワートレイン組み付け装置

 日産自動車は事業構造改革の断行に向けて生産体制の見直しを進める。カルロス・ゴーン元会長時代の拡大路線から一転、余剰となっている生産能力を削減する。稼働率が低い生産拠点の閉鎖や完成車生産ラインの削減で2018年に720万台あったグローバルでの生産能力を、23年には540万台体制に約2割減らす。人員削減などにより固定費も減らし、営業損益分岐点を440万台にまで引き下げた。一方で、将来的な需要増加が見込まれる電気自動車(EV)の生産能力を増強するため、英国工場への大型投資を決定するなど、縮小均衡だけでなく将来を見据えた準備にも余念がない。

 日産の20年度(20年4月~21年3月)の世界生産台数は前年度比17・1%減の380万台と落ち込んだ。新型コロナウイルス感染拡大の影響による工場の稼働停止や半導体不足による自動車の生産調整などによって400万台を割り込むレベルにまで落ち込んだ。特に上期(20年4~9月)は各都市で実施されたロックダウン(都市封鎖)の影響が大きく前年同期比36・7%減と大幅に落ち込んだ。新車需要が回復した下期(20年10月~21年3月)に挽回生産を図ったものの、今年の年明け以降、世界的な半導体需給のひっ迫によって再び生産調整を余儀なくされ、400万台割れとなった。

 厳しい経営環境の中、健闘したのが中国で、生産台数は前年度比16・3%増の160万3892台と、過去最高となった。国別の生産台数で唯一、前年実績を上回った。日産の世界生産に占める中国の生産比率は前年度から12・1㌽アップして42・2%となった。

 日産にとって最大の市場となった中国事業をさらに伸ばすため、電動車攻勢を本格化する。セダン「シルフィ」を皮切りに25年までにシリーズ式ハイブリッドシステム「eパワー」の搭載車を6車種投入する計画。SUVタイプの「アリア」など、EVも含めて電動車を計9車種投入する。

 日産にとって主力市場で、利益の柱であった米国での生産台数は同38・2%減の43万台と大幅マイナスとなった。ゴーン元会長時代に推進してきたインセンティブ(販売奨励金)を積み増した無理な販売政策を撤回、収益性を重視したスタイルに修正していることから米国での新車販売が低迷、生産も低水準で推移している。足元では半導体不足の懸念材料があるものの、台当たり収益などは好転しつつある。20年10月にSUVの新型「ローグ」を投入した新型車効果もあり、21年度の生産は上向く見通し。

 欧州では、販売が低迷していることから、スペインのバルセロナ工場を年内にも閉鎖する。英国のサンダーランド工場も欧州連合(EU)離脱を見据えて閉鎖を含めた事業縮小を検討していた。しかし、昨年12月、英国とEUが通商協定を締結。これを受けて、日産は英国事業を縮小する方針を転換、巨額投資を実行してサンダーランド工場をカーボンニュートラルを見据えたEV生産拠点に衣替えする戦略「EV36Zero」を策定した。工場隣接地に電池メーカーがEV用リチウムイオン電池の製造工場の新設を決めるなど、脱炭素時代を象徴する自動車生産拠点に再編する。

 母国市場である国内の20年度の生産台数は同31・8%減の51万7044台と大幅マイナスとなった。ゴーン元会長時代、日本で雇用を継続してものづくりの競争力を維持するのに必要としていた目安「100万台」の約半分の水準にまで落ち込んだ。日産は規模を追わないことを明確に打ち出しており、国内生産拠点についても、ものづくり力を世界に発信するための拠点に役割を変える。この一環として栃木工場に導入するのが「ニッサン・インテリジェント・ファクトリー」だ。生産ラインをコンパクトにするとともに、ロボットと熟練工による「匠の技」を融合して高品質な電動車両を効率的に生産する拠点とする。生産活動での二酸化炭素(CO2)排出量も大幅に削減する方針で、国内製造拠点で確立した生産技術を海外生産拠点に横展開していく。

 日産はトヨタ自動車やホンダなど、日本のライバルメーカーと比べると自動車生産の回復で遅れをとる。ただ、生産能力を削減していることもあって業績は上向きつつある。電動車時代を見据えた生産体制の構築にも着手しており、反転攻勢の機会を虎視眈々と狙っている。