バイポーラ型ニッケル水素電池の集電体に使われる導電性多孔質体は電極活物質層の厚さ方向に導電経路を形成できる。バイポーラ電極板を積層することで電池容量を増やしながら、大電流を一気に流すことが可能になる

 トヨタ自動車は、19日に発売したハイブリッド車(HV)の新型「アクア」に新しい積層構造を持つニッケル水素電池を駆動用電池として世界で初めて採用した。電気を取り出す端子となる集電体の片面が正極、もう一方の面が負極となっている「バイポーラ型ニッケル水素電池」で、高出力・小型化を実現したのが特徴だ。電動車の駆動用バッテリーにはリチウムイオン電池が採用されるケースが多いが、トヨタは全固体電池も含め、全方位で次世代電池開発を進めている。車種特性に合った電池を適材適所に採用し、2030年に800万台の電動車販売目標の達成につなげていく。

 バイポーラ型ニッケル水素電池は豊田自動織機と共同開発した。従来のニッケル水素電池に比べ、セル当たりの出力が約1・5倍、小型化によって同じスペース内に約1・4倍のセルが搭載できることで、新型アクアのバッテリー出力は前モデルの約2倍を実現。「パフォーマンスが高い電池」(トヨタコンパクトカーカンパニー製品企画・鈴木啓友チーフエンジニア)に仕上げた。新型アクア向けバッテリーの生産は豊田自動織機の共和工場(愛知県大府市)が担当する。

 同電池の特徴は「大出力を一気に出せる」(同)点にある。バイポーラ構造は、集電体1枚で正極板と負極板の両方を兼ねるバイポーラ電極板でセルを構成し、複数のセルを積層した電池構造のこと。集電体などの部品点数が少なくなることで、コンパクトで高い電圧を持つ電池が構成できる利点を持つ。

 電池容量を増やすには、集電板がより多くの電極活物質(正極活物質層と負極活物質層の総称)を保持しなくてはならない。バイポーラ電極板では、電極活物質層の面積(通電面積)を広く取るか、または電極活物質層を厚くする必要があるが、面積を広くする場合は電池の平面サイズが大きくなるため、コンパクトな電池構成が難しくなってしまう。

 一方、集電体には電極活物質の集電性や保持性などを高めるため、ニッケルなどを材料にする導電性多孔質体が使われている。

 この導電性多孔質体は電極活物質層の厚さ方向に導電経路を形成できるため、電極活物質層が厚くなっても電気抵抗が極端に増加することがない。そのため、バイポーラ電極板を積層することによって電池容量を増やしながら、大電流を一気に流すことが可能になった。

 トヨタはバイポーラ型ニッケル水素電池の今後の展開について、「HVを主体に搭載するパワートレインを考慮しながら、どの車両にこの電池を積むかを検討している」(トヨタの先行電池開発部新電池開発・奥村素宜グループ長)と話す。

 トヨタはパナソニックとの合弁会社などで全固体電池の研究開発を進めており、リチウムイオン電池、今回開発したバイポーラ型ニッケル水素電池も含めて、「いろいろな電池を選択できるというのが強みになってくる」(同)とみている。電動車の世界販売を30年に800万台にする目標を掲げる中で、バッテリーについては「適材適所で使い分けをしていく」(鈴木チーフエンジニア)方針だ。