欧州ではバッテリーリサイクルに対応する拠点新設が相次ぐ(写真はBASFが新設するリサイクル試作工場イメージ)

 車載用リチウムイオン電池のリサイクルに向けた動きが活発化してきた。欧州で電池に関するライフサイクル規制が厳格化されることなどから国内外の電池材料メーカーがリサイクル事業に乗り出し、日本国内でもリサイクル能力を拡充する動きがある。自動車の電動化シフトが本格化する中、将来的に使用済みリチウムイオン電池が新たな環境問題になるとの懸念は高まっている。電池のリサイクルシステムが確立すれば、中長期的な課題となる電池材料不足の解消につながると期待されている。

 欧州委員会が昨年12月に発表した「EU(欧州連合)電池規則案」改正案では、コバルトやリチウム、ニッケルを含む電気自動車(EV)用バッテリーや産業用バッテリーなどについて2027年1月から原材料のうち、再利用された原材料使用量を開示することと、30年1月から再利用された原材料それぞれの使用割合の最低値を達成することが義務付けとなる。また、カーボン・フットプリントの申告と上限値の導入、電池メーカーにはリサイクルを前提に、バッテリーの種類別回収の義務付けを追加する。

 電池材料を手がける独大手化学メーカーのBASFは、欧州のバッテリーリサイクル規制が強化されるのを受けて、使用済みのリチウムイオン電池や工場で発生したスクラップ、規格外品から電池材料を取り出す技術を確立するとともに、運用方法を開発するための電池リサイクル試作工場立ち上げを決定した。

 ドイツ・シュヴァルツハイデにある正極材工場敷地内に新設し、使用済みリチウムイオン電池からリチウム、ニッケル、コバルト、マンガンなどの材料を抽出する。試作工場での取り組みで、改正案で示されたリサイクル効率向上や材料回収目標の達成を目指す。リサイクル技術を確立することで、電池材料を安定的に確保して競合他社との差別化も図る。今後、急成長が見込まれるEVでのサーキュラー・エコノミー(循環型経済)の実現に向けた取り組みを本格化する。

 国内企業では、JX金属がドイツに新会社を設立してリサイクル事業推進を加速する。8月1日付でリチウムイオン電池のリサイクルと電池材料事業を推進する新会社「JXメタルズ・サーキュラー・ソリューションズ・ヨーロッパ(JXCSE)」をドイツに設立し、リサイクル事業と次世代車載電池の研究開発を推進する。

 JX金属グループではこれまで、グループ会社の独タニオビスが欧州自動車メーカーとの協業を見据えてリチウムイオン電池リサイクルの事業化に取り組んできた。欧州での電池リサイクル事業の成長を見込んで、現地法人を設ける。タニオビスやJX金属内に設置するリチウムイオン電池材料関連の新部門と連携するほか、現地のスタートアップ企業との協業や産学連携にも取り組み、電池リサイクルを早期に事業化する。

 車載リチウムイオン電池のリサイクルをめぐっては、国内での取り組みも進んでいる。日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)は18年10月に、自動車再資源化協力機構(自再協、嶋村高士代表理事)を窓口に車載用リチウムイオン電池の無償回収システムを構築した。使用済みリチウムイオン電池を適正処理するとともに、コバルトやリチウムの再資源化を進めるのが目的。

 今年6月にはDOWAホールディングスが子会社で行う使用済みリチウムイオン電池の受け入れ能力を6倍に引き上げた。大型の車載用リチウムイオン電池を解体せずに熱処理で不活性化し、鉄やアルミ、銅、コバルト・ニッケル混合物などの資源を分離回収、製錬原料として再資源化する量を増やす。

 電池部材業界も動き出している。4月に発足した電池サプライチェーン協議会(阿部功会長、BASC)は、政府などに提言するためのタスクフォースを設置し、この中でリサイクルスキーム構築を国が主導するよう求めていく。BASCの阿部会長は「電池が重要な戦略製品になる中で安全保障上の観点から(原材料を)外国からどんどんと買うというわけにもいかない。リサイクルも含めて考え、日本の産業競争力を強化するべき」としている。