有馬社長

 デンソーは26日、ソフトウエア戦略を公表した。自動車の知能化や社会構造の変化を背景に、車両の各機能を融合した「クロスドメイン」の追求と、業界標準の基盤づくりに取り組む。ソフト開発を統括する林新之助経営役員は「われわれはトヨタ自動車をはじめ、世界中のOEMとの開発経験や開発資産があり、考えやアイデンティティも理解している」と述べ、メガサプライヤーとして新たなソフトの開発と普及を主導していく考えを示した。

 クロスドメインの代表例として、トヨタ自動車の「ミライ」、レクサス「LS」の「アドバンストドライブ」と呼ぶ運転支援向けに納入した専用ECUを例示した。なかでも「ADS(アドバンスドドライブ)ECU」「ADX(アドバンスドドライブ・エクステンション)ECU」は、車両位置や挙動に関わるさまざまなデータを高速処理するECU(電子制御装置)で、無線更新にも対応させている。今後も開発手法を工夫し、開発ペースと品質を両立させながら機能統合に取り組む。業界標準の基盤づくりでは、開発成果の標準化を提案する。また、OEMとの開発を通じても、標準化や共通化を提案する考えだ。

 こうしたソフト戦略を進めるため、ソフト人材を増やしたり、組織を再編成する。人材面では、今年1月からリカレント(学び直し)制度を導入し、2025年までに既存事業からCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)領域に2千人、ハードからソフト領域に約1千人の人材をシフトさせる。同社はまた、世界の開発拠点をネットワークで結び、時差を活用して24時間の開発体制を構築する方針だ。

 組織面では6月に「電子プラットフォーム・ソフトウエア統括部」を設置し、ソフト人材を集約するとともに、エレクトロニクスやコックピット、情報通信などの部門連携を一段と強化する。

 有馬浩二社長は「新型コロナで仕事の価値や人と接することの価値、移動の価値を見つめ直すことにもなった」と昨年を振り返り「今年はデンソーの新しいスタートを切る年にしたい」と語った。