開発した樹脂製ウインドー(パノラマルーフ)

 豊田自動織機は24日、樹脂製ウインドーの新工法を発表した。耐候性などを高めるコート剤を刷新し、製造コストを従来より約4割減らすことに成功した。樹脂ウインドーは重さがガラス製の約半分で形状の自由度も高いが、製造コストが高いため普及していない。同社はさらに改良やコスト削減を進め、電気自動車(EV)やMaaS(サービスとしてのモビリティ)車両などへの採用を目指す。開発した樹脂ウインドー(パノラマルーフ)は、26日から始まる「人とくるまのテクノロジー展オンライン」の帝人サイトでも紹介する。

 同社はもともと、自動車部品に使うコート剤を自社で手がけており、応用先として1990年代後半に樹脂製ウインドーを製品化した。トヨタ自動車「プリウスα」のパノラマルーフをはじめ、これまでにレクサス「LFA」のクオーターウインドー、トヨタ「86GRMN」のバックウインドーなどを手がけてきた。

 樹脂製ウインドーはガラスより軽い半面、紫外線で透明度が落ちたり、傷がつきやすいため、表面にコート剤を塗布して使う。現在はウインドーの形にあらかじめ射出成形したポリカーボネート樹脂へ「プライマー」「トップ」とコート剤を2回塗布し、その都度、熱硬化させており、製造コストを押し上げていた。

 新工法を可能にしたのは紫外線で硬化する新たなコート剤だ。耐候性や傷つきにくさを確保しながら、塗布後にポリカーボネート樹脂をウインドーの形に曲げても耐えられるようにした。押出成形したポリカーボネート樹脂の平板にコート剤を塗布し、最後に熱間プレスでウインドーの形に仕上げる。射出成形の専用金型が要らなくなる上、熱硬化させる必要もない。積載効率が高い平板のまま納入先の近隣まで運び、熱間プレスで最終成形すれば輸送コストも下げられる。

 また、射出成形では1・6平方メートルの大きさが限度だったが、押出成形ではその最大で約3平方メートルのウインドーを生産できるという。まず、来年から自社の一部産業車両に採用後、森岡事業所(愛知県知多郡)に数億円を投じて設備を整え、23年度にも自動車用樹脂製ウインドーの生産を始めたい考え。法規の関係で現在はサイドやバックウインドーへの売り込みにとどまるが、同社ではコート剤を改良し、将来的には前面ガラスへの採用も目指していく。

 調査会社のグローバルインフォメーションによると、ガラスの代わりに樹脂材を用いる「自動車用樹脂グレージング」の市場規模は2020年の10億ドル(約1090億円)から25年には17億ドル(約1850億円)まで拡大する見通しだ。セダンやSUVでサンルーフやリアクオーターガラスを搭載した高級車の採用が増えることや、複雑なデザインや軽量化に対する需要が成長を後押しする。豊田自動織機としては、自社で手がける産業車両や乗用車のほか、MaaS車両や次世代型EV、「空飛ぶクルマ」など幅広いモビリティに樹脂ウインドーを提案していきたい考えだ。