ルネサスの半導体(イメージ)
火災のあったルネサスの那珂工場

 半導体不足による自動車の減産などの問題が深刻化する中、半導体のサプライチェーンの見直しが進む可能性がある。半導体大手の多くが生産拠点を持たないファブレスで、製造は台湾の受託生産会社(ファンドリー)に集中しており、これが今回の半導体不足の主因となっている。デジタル化する社会で、半導体は企業や国にとっての重要な戦略物資となっており、在庫水準や半導体生産のあり方を見直す機運が高まっている。

 車載半導体の不足は、昨年春に新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、世界的に自動車需要が減少したことがきっかけだった。自動車各社は減産するため、車載半導体の発注も取り止めた。一方で、在宅勤務が浸透したこともあって、パソコンやスマートフォン、データセンター向けの半導体需要が急増し、半導体メーカーは車載用を民生用の半導体生産に切り替えた。

 これに対して昨夏以降、自動車の需要が急回復したことを受けて、自動車各社が半導体の発注を一斉に増やした。しかし、半導体は製造期間が長いもので3カ月程度かかるものもあり、急な発注には対応できない。しかも、台湾積体電路製造(TSMC)は受託生産半導体のグローバルシェアが売り上げベースで5割を超えるなど、半導体の製造が一部のファンドリーに集中していることから、急な増産要請には応じられない。自動車メーカーは必要な半導体を確保できず、自動車生産の減産や停止を余儀なくされた。

 さらに今年2月、米テキサス州で発生した大寒波による停電で半導体の工場が停止したほか、3月にはルネサスエレクトロニクス那珂工場(茨城県ひたちなか市)で火災が発生して生産を停止、半導体不足に拍車がかかっている。

 ルネサスの柴田英利社長は「在庫はボトムの水準。今は作ったそばから消費されていく」としており、2022年第1四半期(1~3月期)まではフル稼働に近い状態が継続することを見込む。こうした中、ルネサスでは、半導体の発注について「半年先分の確定値をもらわないと納入できない」(柴田社長)としており、必要な量を必要な分だけ供給する「ジャスト・イン・タイム」での納入を求めてきた自動車メーカーに対して発注方法や在庫水準の見直しを求めていく。

 また、ルネサスでは、生産拠点のマルチライン化の取り組みを強化している。同じ半導体を生産することは困難でも、同じ機能を持つ半導体を複数の拠点で生産できる体制を構築する。ルネサスも半導体生産の多くをファンドリーに委託しているが、自社での生産を増やして、有事の際、早期に半導体を安定供給できる体制を整える構えだ。

 インフィニオン・テクノロジーズやNXPセミコンダクターズなどの車載半導体大手も、今回の半導体不足の問題を受けてサプライチェーンの見直しを検討するとみられる。

 一方、世界的な半導体不足の問題を受けて、各国政府も対応に乗り出している。自動車に限らず、5G(第5世代移動通信システム)、データセンター、人工知能(AI)などの先進技術を実現するためには、高性能な半導体が必要不可欠だからだ。ただ、微細な高性能半導体の製造には高度な技術と設備が必要で、ファンドリーしかそのノウハウは持っていない。このため、各国政府によるファンドリーの工場誘致合戦が加速している。

 バイデン米大統領は3月24日、半導体の米国内での生産体制を強化するため、370億㌦の連邦政府投資を発表した。米国での半導体国産化政策に呼応するように、インテルは約200億㌦を投じてアリゾナ州に半導体製造工場を新設するとともに、受託製造事業に参入することを発表した。インテルは将来的に欧州でも大規模な半導体製造工場を建設する方針で、欧州連合(EU)と協議する。また、TSMCは米アリゾナ州に高性能な半導体を製造する拠点を現在建設しており、台湾や中国に集中していた半導体の生産が一部、欧米に分散する可能性がある。

 「産業のコメ」と呼ばれた半導体だが、国や企業の競争力に直結するほど、その重要性が高まっている。半導体不足による自動車生産への影響が長期化する中、在庫水準や発注方法を含めてサプライチェーン全体での見直しが避けられない状況だ。