三菱自動車は7日、益子修取締役会長代表執行役(71)が健康上の理由で退任したと発表した。益子氏は三菱商事出身で、2004年に三菱自入りしてから実質16年間にわたって同社の経営を引っ張ってきた。同社は現在も経営状況は厳しいが、7月に発表した新たな中期経営計画を区切りに、経営の第一線から退く。

 7日付で取締役会長と代表執行役を退任し、特別顧問に就いた。同社によると「中期経営計画の発表で将来の道筋がついたことから、このタイミングで一度治療に専念したいという本人からの申し入れがあった」という。

 益子氏は三菱自のリコール事件で当時、筆頭株主だったダイムラー・クライスラーが支援から撤退後、三菱グループから同社の経営再建を託され、05年に社長に就任した。三菱商事で自動車畑を歩んできた経験を生かし、成長が見込まれるインドネシアに新工場を立ち上げるなど、現在の同社の重点市場となっているASEAN(東南アジア諸国連合)地域で経営基盤を固めてきた。一方で、欧州や米国での現地生産の撤退など、リストラも進めてきた。

 優先株の処理に目処をつけるなど、財務基盤が改善した14年には社長を退いて会長に退いたものの、16年に軽自動車の燃費不正問題が発覚して後継の社長が引責辞任したことでトップに復帰した。カルロス・ゴーン氏との信頼関係から日産からの経営支援を取り付け、日産の資本注入後、退任することを明言していたが、ゴーン氏が強く慰留したことから社長に踏みとどまった。ゴーン退場後の19年6月には加藤隆雄氏に最高経営責任者(CEO)職を譲り、会長として日産・ルノーとのアライアンス事案に専念してきた。

 益子氏退任後、会長職は当面、加藤CEOが代行する。益子氏が担当していたルノーと日産の3社連合のトップ会議も加藤CEOが引き継ぐ。