三菱ふそうの燃料電池小型トラック「eキャンターF-Cell」      
トヨタと日野が共同開発する燃料電池大型トラックのイメージ     

 乗用車で先行した燃料電池車(FCV)の技術を商用車に活用する動きが加速してきた。ホンダはいすゞ自動車とFC大型トラックを共同研究することで合意。トヨタ自動車は子会社の日野自動車とFC大型トラックを共同開発する。三菱ふそうトラック・バスは、親会社のダイムラーの燃料技術を活用してFC小型トラックを開発、2020年代後半の量産を目指す。先に市販された乗用車は燃料供給インフラが整っていないことや価格が高いこともあって普及していない。「より適している」とされる商用車分野で、究極のエコカーとされるFCV普及の突破口は開けるのか。

 ホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)と次世代燃料電池システムを共同開発するとともに、燃料電池(FC)システムを量産する合弁会社を米国ミシガン州に設立するなど、FCシステムを「バッテリーでは難しいモビリティの電動化を実現する技術」と位置付ける。役割や用途に応じて電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車、FCVなどの環境対応車を組み合わることで、カーボンフリーな移動を実現する方針だ。

 特にFCについてはトラック・バス、鉄道、船舶、航空機といったさまざまな交通機関で活用して「新たなエコシステムを形成する」構えだ。この一環として今年1月、いすゞとFC大型トラックの共同開発で合意した。大型トラックの次世代パワートレインのラインアップを拡充したいいすゞと、乗用車で先行したFC技術の用途を拡大したいホンダの意向が一致。両社は大型トラック用FCパワートレインシステムや車両制御などの開発と早期実用化を目指す。

 ダイムラーグループはFCシステムを搭載した商用車の実用化を本格化している。22年にFCバスを量産するのに加え、20年代後半までに傘下の三菱ふそうがFC小型トラックの量産する計画を公表した。ダイムラーは1994年にFCVを開発するなど、長年にわたってFCの研究開発に取り組んできた。2018年には欧州でプラグインFCVを量産している。今後、量産化する計画のFCバス/トラックは乗用車で培ってきた技術を応用する。

 トヨタと日野も3月にFC大型トラックの共同開発を発表した。日野の大型トラック「プロフィア」をベースに、トヨタのFCV「ミライ」の次期モデル向けに開発するFCスタックを2基搭載する。トヨタはすでに、現行のミライのFCシステムを応用したものを搭載した大型商用トラックを試作、米国で実証実験を実施してきた。日野と共同開発するFC大型トラックは航続距離600㌔㍍を目標とし、実用性を高めた量産トラックを目指す。

 このほか、現代自動車も市販しているFCVの技術を応用して開発したFCトラックをスイスで今後5年間で1千台を販売する計画を掲げている。

 FCVで先行してきたトヨタ、ホンダ、ダイムラーが商用車をターゲットとしているのは、乗用車よりも需要が見込めるためだ。だが、各社のFCVは車両価格の高さや水素燃料供給インフラが整っていないことから販売は低迷している。商用車は「稼ぐクルマ」だけに、車両価格が高くなることによるハードルは一般消費者向けのFCVよりは下がる。また、ある程度決まった路線を走行する幹線輸送トラックやバスの場合、燃料供給インフラの問題もクリアできる可能性がある。

 三菱ふそうのアイドガン・チャクマズ副社長・開発本部長は「FCトラックの航続距離は300㌔㍍で長距離輸送に適している」と見る。同じエコカーのEVで航続距離を伸ばそうとすると電池重量がかさんで、トラックの積載量が減るが、FCトラックなら輸送効率を大きく損なわない。

 ただ、高価なFCトラック/バスを事業者が受け入れるかは不透明だ。三菱ふそうのハートムット・シック社長は「二酸化炭素ニュートラルな輸送は無料ではできない」と、各国政府などの購入補助金など支援が不可欠との見方を示す。各社が開発を本格化するFC商用車だが、普及に向けたハードルは低くない。

  (編集委員 野元政宏)