自動車業界で新型コロナウイルスの感染が広がっている。トヨタ自動車は20日、高岡工場(愛知県豊田市)の製造現場に勤務する20代男性の従業員1人が感染したと発表した。感染の疑いがわかった19日には同従業員の勤務エリアの消毒作業を実施、すでに稼働を再開している。コロナウイルスの感染者は日野自動車の本社やメルセデス・ベンツの販売店などでも見つかっている。欧米と比べると感染の広がりが落ち着きつつあるように見える国内だが、政府の新型コロナウイルス専門家会議では「一部地域で感染拡大が継続しており、大規模流行につながりかねない」と指摘するなど、依然として予断を許さない状況が続きそうだ。

トヨタで感染が発覚した従業員は、14日に発熱して16日から休暇を取っており、発熱が続いたため、19日にウイルス検査を実施したところ陽性反応が出たという。同従業員の職場での行動履歴を確認したところ、社内で11人の濃厚接触者を特定。濃厚接触者は同従業員との最終接触日から2週間の自宅待機としている。

自動車業界では、先週から相次いで感染が発覚している。13日にシュテルン和歌山(石井博社長、和歌山市毛見)が運営する販売店「メルセデス・ベンツ和歌山」(和歌山市毛見)に勤務する従業員1人が感染したことが判明。国内の自動車関連企業では初の感染となった。16日には日野自動車も東京都日野市の本社に勤務する販売会社の支援業務を担う50代男性と60代男性従業員2人が感染したと発表した。両社ともに濃厚接触者を自宅待機させるなどの対応を行っている。

新型コロナウイルスの感染は欧州や米国など世界各国で爆発的に広がっており、イタリアでは感染による死者数が中国を上回ったほか、米国では50州全てで感染者が確認された。これを受けてトヨタやホンダなど日系自動車メーカーは欧州や北米での生産を停止している。

一方、国内では、19日に開いた政府の専門家会議が3月上旬以降、1人の感染者が平均してうつす人数「実効再生産数」が全国で連続して1を下回ったとし、国内での感染がある程度抑えられつつあると分析している。ただ、東京や大阪、兵庫など都市部を中心に感染経路がわからない新規感染者が増えていると指摘。爆発的に患者が急増する「オーバーシュートが突然起きる恐れがある」と警告した。

19日に会見した日本自動車工業会でも、コロナウイルスの影響度合いが見通せないとして、例年3月に発表する国内四輪車需要の当年度見込みと次年度見通しについて公表を見送った。豊田章男会長は国内市場について「今期より来期の方が影響は大きい」と見解を示すとともに、自動車産業への影響について「まだ先は読めない。長く続かないことを祈っている」と語った。