日本精工は、電動車向けの毎分3万回転の駆動モーターに対応する高速回転玉軸受を開発した。従来品は高速回転時に遠心力で保持器が外側に変形し、外輪などと接触して破損することが課題だった。開発品は保持器が変形しにくい材料や形状に変更し、高速回転性能を高めた=写真。同製品で2030年に売上高100億円を目指すとともにさらなる高速回転対応の製品の開発にも着手する。

 駆動モーターは小型・軽量化と高出力化を目的に高速回転化が進んでいる。足元では毎分1万5千回転がメインだが、同社は20年後半には毎分2万5千~3万回転まで高まるとみて高速回転への対応を図っている。

 開発品は樹脂を使用する保持器の構成材料をガラス繊維からカーボン繊維に変更し、剛性を高めたことで変形量を3割低減した。加えて、先端を薄くして根元を肉厚にする形状変更で、遠心力の影響を低減するとともに剛性を高めて、外輪と接触しやすい先端部の変形量を5割低減することで、毎分3万回転のモーターでも稼働が可能なことを確認した。

 新製品を適用したモーターは、毎分1万1千回転まで許容する軸受を採用するモーターに比べて体積で約45%の小型化に貢献するという。モーターの小型化で燃費や電費の向上、航続距離の延長が可能になる。これにより、電動車向けモーターの高速回転化はさらに進むとみられ、同社では毎分3万回転以上の高速回転に対応した軸受の開発も進める考えだ。