鈴木社長
マルチ スズキ インディア

スズキはインド事業の立て直しを急ぐ。同社が11月5日に発表した2019年4-9月期業績は、主力市場であるインドの販売低迷で、営業利益が前年同期比40.2%減の1186億円と大幅減益となった。スズキはインド新車市場の伸長とともに、インド事業を拡大して業績を伸ばしてきたが、8期ぶりに営業減益となった。鈴木俊宏社長は「(インドは)右肩上がりはもうない。山あり谷ありまず、谷をしっかりと乗り切るために準備する」と述べ、販売てこ入れに注力する方針を示した。

4-9月期のグローバル販売台数は同17.2%減の140万8000台と大幅に落ち込んだ。インドの販売が同26.5%減の67万5000台と低迷したためだ。スズキは乗用車市場で約5割のシェアを持つインドで販売を伸ばして規模を拡大してきた。

ところが昨年10月以降、インドの新車市場は落ち込み、スズキの成長にも急ブレーキがかかっている。台風の影響で農村部の収入が減少したのに加え、選挙後に政府が景気刺激策を打ち出すと見て、買い控えの動きが表面化した。その後、期待された政策が打ち出されず、需要は低迷したままだ。

さらに、金融機関によるローン審査の厳格化や、新車購入時の頭金の増額、保険料の値上げなどが追い討ちをかけ「市場は冷え込んでしまっている」(鈴木社長)状況だ。

スズキはインドでの販売てこ入れに乗り出している。8月にMPV「XL6」、9月に小型SUV「エスプレッソ」と新型車を相次いで投入した。また、新しい「BS6」排ガス規制に先駆けて、8モデルを先行して規制に対応した。年内にインドで販売する全モデルで規制前にBS6対応を完了する予定。9月下旬には、政府が打ち出した法人減税のメリットを消費者に還元するため、車両販売価格を5000インドルピー引き下げた。

これらの効果によってインドでの10月の卸販売台数は前年同月比2.5%増の14万2000台と8カ月ぶりに前年を上回った。10月の小売台数も同17.6%増の18万9000台となった。ただ「販売に明るい光が見えたかもしれないが(先行きは)慎重に判断せざるを得ない」(鈴木社長)としている。スズキは10月10日に通期業績見通しを下方修正した。当初、通期のインド販売台数は前年同期比4%増を見込んでいたが、同20%減の140万台程度になる見通しだ。

今後も、インドでの販売ネットワークの整備や、排ガス規制対応を前倒しで、販売を促進して業績向上に結び付ける構えだ。