日刊自動車新聞社はかつて、モータースポーツの健全な普及を目指し、18年にわたって全国でラリーを展開していた。その中で最高峰の大会が年に1度開かれる「日本アルペンラリー」であり、日本における本格的なモータースポーツイベントの原点といっても過言ではない。本書からは国内ラリー黎明期に関わった人々の情熱が伝わってくる。

 1959年、弊社事業部(当時)に新設したユーザー組織「日本モータリストクラブ(JMC)」がラリーを主催した。JMCがスタートした年から関東地区ラリーを皮切りに全国各地で地区ラリーを行い、そして第1回日本アルペンラリーも開かれた。以来、地区ラリーが普及を目的とした初級・中級者向けの大会なのに対し、日本アルペンラリーはヨーロッパの山岳ラリーをイメージした上級者向けのコースで、そのハードさも語り継がれる所以である。

 誰もが手探りでラリーに取り組んだ初期のころは、さまざまな人物が日本アルペンラリーに挑戦した。「日本アルペンラリー参加の思い出を語る」の項では第1回大会を制した古我信生氏、カーグラフィックを創刊した小林彰太郎氏、スバルテクニカインターナショナル元社長の久世隆一郎氏、日本を代表するラリーストの篠塚建次郎氏らが、ドライバーとして参戦した日本アルペンラリーを振り返っている。

 ラリーは、日本車を世界に通用する車に鍛える場でもあった。日本アルペンラリーの結果が世間に注目され、販売にも影響することがわかると自動車メーカーのワークスチーム、セミワークスチームが増えていった。次第にラリー専用のカスタムも本格化し、競技車両らしい面構えになっていく。

 「注目を集めた出場マシーン群」としてブルーバード、カローラレビン/スプリンタートレノ、ギャラン、スバル1000、シビック、サバンナ、ベレットなどについて日本アルペンラリー参戦時の写真とその活躍ぶりを紹介。

 本書のベースとなった「日本アルペンラリーの足跡」は1996年に湧水社出版から発行された。60年代、70年代の国内ラリーの状況を記した書籍が少ないこともあり、復刻を望むラリーファンの声が多かった。

 新刊として発行するにあたり、新たに当時の写真約100点を収録。さらに25年ぶりに復活した2001年の「第19回スパイク・インターナショナル日本アルペンラリー」、日本初の世界ラリー選手権(WRC)「ラリージャパン」などについても解説している。

(沼田 利一)

 A5判上製・256㌻、定価3000円(税別)。6月20日発売予定。三樹書房(☎03―3295―5398)刊