鴻海のEVバス「モデルU」

 三菱ふそうトラック・バスが台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業に電気バス(EVバス)の生産委託を検討していることが26日までに分かった。実現すれば、鴻海にとって三菱自動車(豪州向けEV)に次ぐ日本メーカーからの受注になる。EVバスは、日本市場への投入も視野に入れている可能性がある。

 鴻海はEVの受託生産事業に力を入れており、EVバスは路線バス型の「モデルT」と、全長7メートル弱のマイクロバス型「モデルU」の2車種を持つ。同社EV事業の関潤最高戦略責任者(CSO)は4月に東京都内で開いた説明会で「2027年に2モデルを日本市場に投入する」と語っていた。鴻海は三菱ふそうへの供給については「ノーコメント」としている。

 三菱ふそうは大型、小型、路線バスの3車型のバスを手掛けているが、EVバスは今のところ扱っていない。カール・デッペン社長は今月、「パートナー企業との取り組みはあるが、詳細は開示できる状況にない。EVバスの投入は大事だ」と話していた。

 三菱ふそうは今月、日野自動車との経営統合の最終合意を発表した。日野はいすゞ自動車との折半出資会社「ジェイ・バス」を持つ。日野の小木曽聡社長は26日の株主総会で「バス事業でのいすゞと三菱ふそうとの関係は今後、検討する。いずれにしてもユーザーにとってより良い形となるように検討を進める」と説明した。

 鴻海は5月、三菱自動車のオセアニア地域向けEVの供給で同社と覚書を結んでいる。劉揚偉会長は「伝統的な自動車メーカーからの認知を得られた。EVでの目標を達成する自信が高まった」と株主総会で語った。

 台湾の地元報道は「価格競争が厳しく利幅の低い乗用車より、商用車の方が利幅が大きい面もあるのでは」との見方のほか「日本では、高齢化によるドライバー不足が深刻で、三菱ふそうなどの業界は自動運転トラックにも取り組んでおり、EV供給でそれらの戦略を補完することもできる。バッテリー交換や充電拠点をめぐっても、日本では取り組みが進んでいる」と、市場としての有望性を指摘する声がある。