ホンダは今期、約362万台の販売を見込む(広汽本田汽車の新エネルギー車工場)

 ホンダを主要納入先とする上場部品メーカーの2026年3月期業績見通しは全9社中、6社が営業増益を予想した。中国事業の苦戦など厳しい状況は続くが、工場の統廃合や人員削減などの構造改革を進めてきたことや、部品価格の改定が進むことで収益が改善する。ただ、エフ・シー・シーが業績見通しを「未定」とするなど〝トランプ関税〟の影響は見通せず、先行きは不透明だ。

 ホンダは今期の四輪販売を前期比2.4%減の362万台と予想する。主力である北米での生産・販売は伸ばす計画だが、中国やタイなどのアジア、日本が低迷する。サプライヤー各社の受注量も横ばいが見込まれるが、工場の統廃合や人員の削減などを先行してきたため、収益は改善する見通し。

 9社のうち、6社が部品販売減などによる減収を予想するが、6社が営業増益となる見込みで、稼ぐ力は強まっている。今期、大幅な減益を予想するのはデジタル化などの成長投資がかさむ田中精密工業だけだ。

 ただ、今期はトランプ政権による関税の影響が見通せない。クラッチ大手のエフ・シー・シーは業績見通しを未定とし、関税影響の合理的な算定が可能になった段階で開示する。関税の影響を除いても中国や米国の四輪車部品の受注減の影響で売上高は前期比9%の減収を見込む。

 プレス部品のエイチワンは今期、米関税影響として34億円を見込むが、ほぼすべてを吸収する計画。7月に中国から輸出していた金型機械設備を日本に移すのに加え、日本から米国経由でカナダに輸出していた部品をカナダに直接輸出するなど、関税の影響を抑制できよう体制を見直す。

 シートのテイ・エス テックは今期、関税の影響を織り込まず減収で、営業利益は横ばいを予想する。保田真成社長は「(ホンダの)中国減産のリスクは想定しているが、関税分は価格に転嫁する」と語った。今期、営業増益を予想するエフテックの福田祐一社長も「(関税負担は)基本的に取引先の自動車メーカーが負担すると考えている」とし、業績見通しには織り込んでいない。

 車体や変速機部品のジーテクトは「米国向け部品のほとんどがメキシコ、カナダからの輸出で現時点で大きな影響はない」(高尾直宏社長)とし、今期は前期並みの業績を予想する。米国向け自動車部品に関税が課されても、自動車市場そのものの動向は別にして、現時点で業績影響は大きくないもようだ。

 一方、各社の前期(25年3月期)業績は、中国事業が低迷したものの、ホンダ以外の取引を拡大してきたことなどから5社が営業増益だった。期中のホンダの四輪販売は前期比9.6%減の371万6千台。このため、増収は9社のうち3社にとどまったが、収益力は向上している。

 エイチワンは24年3月期に減損損失を計上したことや、製造コストを圧縮したことで前期、営業黒字に転換した。「価格改定や北米などで固定費を適正化してきた」(真弓世紀社長)ことが寄与した。エフテックは、北米で進めてきた「ターンアラウンド推進体制の構築や価格改定の効果」(福田社長)で大幅な営業増益となった。ただ、中国で減損損失などを計上したため、最終損益は69億円の赤字だった。エフ・シー・シーは四輪事業が営業減益だったが、二輪事業が全体をけん引して増益となった。

 営業減益は4社。J―MAXはホンダの減産や金型設備の販売減、生産車種構成の変化に加え、建設中の岡山工場の投資負担もあって大幅減益となった。ユタカ技研は中国の大幅な受注減少に加え、人員削減に伴う補償金などの費用を計上、営業利益が前年同期比43%減とほぼ半減した。