会場では日本メーカーも相次ぎ新型EVを発表した
東風日産の関口総経理はN7の受注に「手応えを感じている」と話す
マツダの毛籠社長は「今はボトムにいるが、これから上げていきたい」と意気込む

 【上海=福井友則】電気自動車(EV)大国の中国市場で、日本の自動車メーカーが手掛けるEVの存在感がじわりと増している。23日に中国・上海で開幕した自動車ショー「オート上海2025」(上海国際自動車工業展覧会)では、トヨタ自動車やホンダ、マツダなどが現地合弁会社と共同開発した新型EVを相次ぎ出品。日産自動車は、今月発売する新型EV「N7」で約5千台の予約受注を獲得。会場では各社首脳が中国市場における新型EVの手応えを語った。とはいえ、中国の「新エネルギー車(NEV)」市場の9割は現地メーカーが占めるだけに、日本メーカーの攻勢はまだ始まったばかりだ。

 「価格発表前の予約注文だが手応えはある」―。23日、同ショーで会見を開いた東風日産の関口勲総経理は、N7の中国市場の反響に顔をほころばせた。月内に発売予定のN7は、東風汽車との合弁を通じて開発した現地EV市場の戦略車だ。先進運転支援システム(ADAS)は中国スタートアップのMomenta(モメンタ)製を採用するなど知能化技術でも現地化を加速させた。

 ホンダも中国市場向けEV「イエ」シリーズの第2弾「GT」に、モメンタと共同開発したNOA(ナビゲーション・オン・パイロット)を搭載する。人工知能(AI)では、こちらも現地AI新興のDeepSeek(ディープシーク)を採用した。五十嵐雅行中国本部長は「中国はNOA技術がグローバルの中でも極めて速いスピードで進化し普及している」と述べ、現地の先進技術を積極的に採り入れる。

 トヨタが初披露した「bZ7」は広州汽車と広汽トヨタ、トヨタ知能電動車研究開発センターによる現地開発EVだ。基本ソフト(OS)は華為技術(ファーウェイ)の「ハーモニックOSコックピット」を採用。ルーフには中国車でよく見かけるLiDAR(ライダー、レーダースキャナー)ユニットを搭載し、高度な運転支援を実現する。

 トヨタは22年に満を持して投入したEV「bZ4X」が中国市場で苦戦を強いられている。トヨタ中国現地法人の李暉総経理は現地向けEVについて「研究開発の主導権を日本から中国に移す」と話し、中国市場のニーズに即したEVの投入を急ぐ。

 重慶長安汽車との協業によるNEVの第2弾「EZ―60」を発表したマツダの毛籠勝弘社長は「世界で一番大きな市場において、パートナーとの協業に力を入れるのは当然重要なことだ」と話す。マツダの中国向けNEVは、第1弾の「EZ―6」とともにEVとプラグインハイブリッド車(PHV)を設定するのが特徴だ。マツダでは両モデルともにPHVの販売比率が過半を超えるとみており、PHVで攻勢を強める現地新興メーカーに対抗する。

 24年の中国新車市場は、政府によるNEVへの支援策が需要を支え、前年比4.5%増の3143万台だった。このうち、NEV販売は同35.5%増の1286万台で、新車市場の4割を超える。一方、日本メーカーは軒並み前年割れとなった。マツダの毛籠社長はNEVの拡販で「今はボトムのところにいるが、これから上げていきたい」と意気込む。