光導波路フィルム

 住友ベークライトは、独自の高分子化合物(ポリマー)技術を用いた光導波路の開発に力を入れている。民生機器向けのほか、車載用でもグループでワイヤーハーネス(組み電線)を手掛ける住友電気工業と組み、高速・大容量通信と軽量化などを両立させるソリューションとして自動車メーカーに売り込む。先進運転支援システム(ADAS)や自動運転、コネクテッド技術の進展を背景とした通信量の急増を商機に事業の拡大を狙う。

 光導波路は、通信に光信号を用いる伝送路を指す。同社は、独自のポリマー材料と製法による、光伝搬損失が低く、干渉が少ない光回路フィルム技術を持つ。「枝分かれ回路」を形成することで、光信号の分岐や集合が高精度かつ容易にできることも特徴だ。マイクロミラー・コネクタにより、光素子や光ファイバーとも接続できる。

 有望な用途の1つとして取り組むのは車載光ネットワークで、複雑な光配線接続を可能にする製品を開発中だ。ECU(電子制御ユニット)内で光信号を集約したり、光信号と電気信号を変換したりできる。

 特に、自動運転のような制御には、8K(横8千×縦4千ピクセルの解像度)の映像伝送が必要となり、25㌐ ビット 毎秒(Gbps)の伝送速度が必要と想定。電気伝送では困難な領域を光分岐コネクター付きのハーネスで実現することができる。オートネットワーク技術研究所(住友電工グループ)と連携し、次世代光ハーネス用の光スプリッター(分岐器)の開発などにも取り組む。

 住友電工と共同開発する背景には、電動化やアーキテクチャー(構造)が変わろうとする中で、ECUに追加拡張(多ポート化)の技術トレンドがあるからだ。ただ、部品点数の増加によるコスト上昇や開発・生産作業の複雑化、配線の太径化による重量増などを解決する必要がある。光スプリッターを使えば、例えば高解像度のカメラデータやセンサーデータを、自動運転ECUやディスプレー、ドライブレコーダーに分岐させるといったことが容易になる。回路事業開発部の金田研一開発部長は「光ハーネスなら軽量で、高速・大容量通信ができる。電気信号に比べて高い耐ノイズ性能があり、損失低減などにもつなげられる」と語る。

 もっとも今は、量産技術の開発や信頼性評価、各種規格への対応などの課題もある。同社はこれらに対処しつつ、2026年度にはサンプル提供を始め、30年頃にかけての普及を見込む。数年後に発売される新型車への採用を目指し、完成車メーカーやティア1(一次部品メーカー)へ提案していく。