国内タイヤメーカー4社の2024年12月期通期連結業績は、いずれも増収となった。住友ゴム工業、横浜ゴム、トーヨータイヤは今期もさらなる売り上げ増を狙う一方、最大手のブリヂストンは減収減益予想と、先行きは明暗が分かれる。こうした中、各社の強みや挽回・成長シナリオにも、独自色が目立ち始めた。
ブリヂストンの24年12月期は売上高、調整後営業利益ともに前年を上回ったが、純利益は期初予想を約700億円下回って減益となった。欧州や南米などの収益性が改善できず薄利にあえぐなど、24年からの3カ年中期経営計画で掲げる事業再編・再構築の効果が思うように得られていない状況だ。今期も減収減益と予想し、石橋秀一グローバルCEO(最高経営責任者)は「25年を『緊急危機対策年』と位置付ける」と厳しい表情を浮かべる。
住友ゴムの24年12月期は売上高、営業利益とも過去最高益を更新。米国工場閉鎖に伴って約700億円を計上した影響もあり純利益は減少したが、「構造改革での最優先課題だった北米事業などをめど付けできた」(山本悟社長)ことで、25年以降は新型全天候型タイヤなどを武器にグローバルで攻勢に出る。今年1月、約800億円を投じて米グッドイヤーから欧米などでの「ダンロップ」商標権を買い戻したこともこの一例だ。
横浜ゴムも3期連続の最高益を記録し、中計2年目となる今期もさらなる上積みを見込む。成長をけん引するのは鉱山・農機用などのオフ・ハイウェイ・タイヤ(OHT)事業だ。ここ数年の大型買収案件に続き、今年2月には約1400億円でグッドイヤーの鉱山・建設用タイヤ部門を取得。早期の収益貢献を織り込む。
トーヨータイヤの24年12月期は売上高、営業利益、純利益全てで過去最高を更新。売り上げの約3分の2を占める北米市場が伸長し、円安効果も後押しした。一方で、今期は原材料費や海上運賃の高騰、円高を織り込み減益と予想。トランプ米政権の関税政策についても「10%の関税とすると何十億円の損失になる」(清水隆史社長CEO)と警戒する。同時に、中国事業の撤退、欧州事業のセルビアへの集約などもテーマとする。
各社とも、事業のコアとなる乗用車向けタイヤやトラック・バス向けタイヤでは、高付加価値戦略を打ち出し、中国勢など廉売メーカーとの差別化を図る方針で一致する。半面、グローバル経営資源を再配置する近年の流れの中で、注力市場や重点領域の違いも浮き彫りになっている。〝トランプ関税〟や中国勢の台頭などで事業環境が不透明さを増す中、各社の戦略の成否が今後の注目点となる。