デンソーと富士電機は11月29日、共同申請したSiC(炭化ケイ素)パワー半導体の供給確保計画が経済産業省に認定されたと発表した。事業総額は2116億円で、最大で705億円の助成を受ける予定。電気自動車(EV)などで需要が高まるSiCパワー半導体の生産能力強化に向け、連携して供給基盤を整える。
対象となる生産拠点は、デンソーの大安製作所(三重県いなべ市)、幸田製作所(愛知県幸田町)、富士電機の松本工場(長野県松本市)。
デンソーは、ウエハーや素子、モジュールからインバーターに至るまで幅広いSiC技術を開発している。一方、富士電機はパワー半導体素子の開発から量産まで一貫した体制を備える。車載分野での両社の製品開発力と生産技術力を生かし、国内でのSiCパワー半導体の供給能力を拡大する。
経産省は同日、「経済安全保障推進法」に基づき、半導体と先端電子部品の安定供給確保に関する計画を8件認定したと発表した。デンソーと富士電機のSiCパワー半導体の投資計画もその一つ。助成総額は最大約1000億円を見込み、昨年度の補正予算から拠出する。
EVの普及に伴い市場拡大が見込まれるSiCパワー半導体は、航続距離の向上や充電時間の短縮、モーターの小型化などに貢献できる。このため世界的に開発競争が激化している。経産省はこうした支援を通じてサプライチェーン強靭化につなげる考えだ。
武藤容治経済産業相は同日の閣議後会見で「生産拠点を集約することでシェア上位の欧米企業並みの供給能力の確保を目指す。このほか、半導体部材料や通信機器に不可欠な先端電子部品の生産能力増強を図る計画も認定した」と述べた。