トヨタ自動車は国内販売をてこ入れする。一部の新車を対象に、同社が購入者に5万円分の電子マネーを直接、キャッシュバックする販促キャンペーンを10月から始めた。トヨタの販売促進策で系列販社の負担を求めないケースは珍しい。トヨタの4~9月新車販売は認証不正などの影響で前年実績の9割程度にとどまった。下期から国内向けの新車供給量を増やしていることもあり、メーカー主導の販促策を展開して受注を後押しする。
国内ではコロナ禍以降、半導体不足など部品供給網の混乱で車両生産がたびたび停止し、慢性的な新車不足が続いていた。トヨタも最大で100万台規模の受注を抱えていたが、現在は「徐々にだが受注残は解消しつつある」(系列販社の首脳)という。認証不正で生産を見合わせていた「ヤリスクロス」の生産も9月から再開したこともあり、長らく控えていた積極的な受注活動を再開する。
販促施策の対象車種は主力のハイブリッド車(HV)「プリウス」「アクア」をはじめ、「クラウン」シリーズや「カローラ」シリーズ、ダイハツ工業からOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受ける「ライズ」「ルーミー」などを含む合わせて13車種。今も受注を制限しているミニバン「アルファード」やSUV「ランドクルーザー」シリーズは対象外とする。キャンペーン期間は2025年3月末まで。トヨタファイナンス(西利之社長、名古屋市西区)が手掛けるスマートフォン決済アプリ「トヨタウォレット」で最大5万円分をキャッシュバックする。
こうした販促施策は従来、キャッシュバック金額の半分を販社側が負担するなどしてきた。メーカーが全額負担するケースは珍しい。
トヨタの上期新車販売は前年同期比9.6%減の67万1485台だった。トヨタが国内販売の〝目安〟とする150万台の進ちょく率は9割程度だ。今回の販促施策では、納期が2カ月程度とほぼ正常化しているクラウンやカローラシリーズを対象とすることで、工場稼働率を平準化する狙いもあるとみられる。