ゼロシリーズのパワートレイン(プロトタイプ)

 ホンダは、運転者が周囲を注視しなくても済む「レベル3(条件付き自動運転)」のアイズオフ領域を広げる。2030年までに高速道路で速度を問わずアイズオフできるようにし、その後、一般道でもアイズオフ走行する技術を確立する。電気自動車(EV)の次世代商品群「ゼロシリーズ」には、無線によるソフトウエア更新を採用し、レベル3機能を段階的に顧客へ提供していく。レベル3は製造物責任(PL)など技術以外にも難易度が高く、「レベル2」(高度な運転支援)の高度化にとどめる同業他社も多い。ホンダはレベル3の〝正常進化〟で差別化を目指す。  

 栃木県芳賀町の研究開発拠点で8日までに開いた技術説明会でこうした方針を示した。レベル3の進化に向けては、センサーの高精度化に加え、人工知能(AI)の活用を進める。例題と正解を一対としてAIに読み込ませる「教師データ」に頼らなくても判断制度を高める手法に熟練ドライバーの行動モデルを組み合わせた独自のAIを米スタートアップのHelm.ai(ヘルム・エーアイ)と共同開発する。〝教師なし学習〟により、短期間でレベル3の提供エリアを拡大していく作戦だ。さらに30年代以降はインフラとの協調制御を視野に入れ、自動運転技術の高度化を図る。

 ホンダは21年、リース販売した「レジェンド」に「ホンダセンシングエリート」の「トラフィックジャムパイロット」として世界初のレベル3機能を搭載した。しかし、アイズオフは国の「自動運行装置」基準に準拠する形で高速道路の渋滞時(時速30㌔㍍以下で作動し、同50㌔㍍以上で解除)に限って動作するものだ。その後、BMWはレベル3走行を時速60㌔㍍以下までアイズオフ走行できるようにし、中国・吉利汽車傘下のZEEKR(ジーカー)も25年をめどにレベル3を実用化する方針を明らかにしている。

 ホンダ電動事業開発本部の秋和利祐BEV開発センター所長は「誰よりも早くアイズオフを全域に広げていく」と語った。ホンダ車が関係する交通事故の死者数を30年に半減させ、50年にゼロとする目標の達成につなげる。

 説明会ではこのほか、ゼロシリーズに適用するメガキャストによる電池パックやリアモジュールの試作品、異なる板厚の材料を高精度に溶接する技術、SDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)で目指す提供価値などを報道陣に公開した。来年1月の米デジタル見本市「CES」でも、知能化技術を中心にゼロシリーズに搭載する機能や技術を披露する。