企業や団体の従業員向けの「団体扱(あつかい)契約」の自動車保険で損害保険大手4社が、「大口団体割引」の割引率を低めに抑えるなどの事前調整を行っていた疑いがあることが分かった。金融庁が調べている。

 4社は東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険。団体扱契約は企業や団体が、従業員の福利厚生の一環として紹介する保険で、その企業のグループの代理店が販売することが多い。普通の保険のように個人が契約者になるが、保険料は企業や団体が従業員の給料から差し引くなどして集める。

 契約者数などによって割り引きがあるが、企業や団体の同意を得ずに割引率を低く抑えるなどの不適切な調整が行われた疑いがあるという。損保2社の商品を紹介するケースもあり、割引率をそろえたりする必要があったもよう。損保側は不適切だったことはおおむね認めている。

 ただ、当局も含めた複数の関係者によると、違法性については判断が難しいようだ。契約者は価格を比較してダイレクト系損保や他損保の商品を選ぶこともできるため、競争を制限することを禁じている独占禁止法に抵触するかどうかは簡単に言えないようだ。また、保険料を高くつり上げたわけではないため、保険業法上の契約者保護の点からどれだけ「被害」があったかの認定も難しいという。

 損保大手4社は2023年、法人向け共同保険料の価格調整(カルテル)問題で、金融庁から行政処分を受けた。この調査の中で今回の件が分かったという。