ビッグモーターの不正請求問題では損保と代理店の「力関係の逆転」が起きていた

 ビッグモーター(和泉伸二社長、東京都多摩市)の自動車保険金不正請求問題などを受けて、大規模な乗合保険代理店を管理監督するための「自主規制機関」の設立が再発防止の有力案として浮上してきた。

 設立方針が決まった場合、金融庁は保険業法を改正し、法的位置づけを明確にした組織にする方針。損害保険業界の構造的課題を議論する金融庁の「有識者会議」(座長・洲崎博史同志社大学大学院司法研究科教授)の2回目の会合が25日に開かれ、自主規制機関の設立を求める声が相次いだ。

 保険業法では原則、損保が保険代理店を管理監督する。ただ、保険販売額が大きく、複数の商品を扱う大規模な乗合代理店が増え「力関係が逆転してきた」と指摘されている。ビッグモーターがそうだった。損保代理店は15万~16万店あるといい、金融庁も権限を委譲されている各地の財務局も十分な管理監督ができていなかった。

 有識者会議の初会合では、代理店の評価を第三者にしてもらうよう求める声が相次いだ。生命保険業界で導入されている「認定代理店制度」を参考にするべきだとの声が多かった。ただ、この制度は、希望する代理店が自ら費用を負担して評価の「お墨付き」を得る仕組みだ。「厳しく管理監督する組織としてはやや狙いが違う」との意見がメンバーから出た。

 嶋寺基弁護士(大江橋法律事務所)は「(第三者的な評価をするのが)業界団体の中にあると評価が形式的になってしまう。改善を求めていく組織なので金融庁の関与、監督の目線が必要だ」として、強い権限を持つ第三者の組織にするべきだと強調した。

 会議の座長である洲崎博史同志社大学大学院司法研究科教授は、法律上の根拠のある自主規制機関のような組織の設立を視野にいれていく必要があるとの見方を示した。

 会議の中で実例として挙がったのは日本証券業協会だ。同協会は金融商品取引法で「自主規制機関」として位置付けられている。

 このような組織を設立し、少なくとも一定規模以上の大規模な乗合保険代理店が「自主規制機関」の定期的な評価を受けることを義務化するべきだとの意見が多く出た。

 金融庁もこの考えを今後の対策として有力視している。ただ、このような組織をつくって運営する場合、運営資金の手当てや、いかに実効性を保てるかという点などが課題になる。

 管理監督の対象を小規模代理店を含めてすべての代理店を対象にするのか、大規模な代理店だけにするのかなどについてもメンバーから異なった意見が出された。

 次回の有識者会議は5月24日の予定だ。