電子制御で難なく悪路を走破する
外装デザインはライトデザインの異なる2種を用意
ランクルシリーズが出そろった(左から300、250、70)

優れた悪路走破性に加えて耐久性や信頼性の高さが認められ、世界中のユーザーから支持されているトヨタ自動車の「ランドクルーザー(ランクル)」シリーズ。その最新モデル「250」が国内販売を開始した。ランクルシリーズの中核を担う250は日常生活における実用性を重視し、電動パワーステアリング(EPS)をランクルで初採用するなど扱いやすさを向上した。悪路走破性を進化させながらも乗り心地が良く、内外装の質感も高い。さなげアドベンチャーフィールド(愛知県豊田市)のオフロードコースで250の実力を試した。

試乗コースは道幅が狭く高低差もある林間コースが中心で、前日の雨で地面はぬかるんでいた。オフロード走行を主体とした「70」、旗艦モデルの「300」も含め、ランクルシリーズ3車種を乗り比べた。

2021年に登場した300は、発売時に注文が殺到し、今も受注停止となっている人気モデルだ。主張が強い大型フロントグリルや豪華な印象の運転席周りは、上位モデルであることを主張している。走り出すと、狭い林道では車体が大きく、少し取り回ししづらいと感じるが、走破性は高く悪路を走る不安は一切感じさせない。試乗したグレード「GRスポーツ」では250に設定がないサスペンション制御システム「E-KDSS」を採用し、長いサスペンションストロークも相まって4輪が地面から浮くことなく凸凹の上り坂を登り切った。

70は、まずアイドリング状態のエンジンの振動に驚く。衝突安全性や環境規制に対応するためにパワートレインや外観を改良したものの、基本設計は1980年代に登場した頃から変わらず、乗り味も旧車に乗っているようだ。サスペンションは前後ともリジッドで、リアはリーフスプリングとハードな仕様だ。

林間コースを走り出すとタイヤが路面状況をダイレクトに伝えてくるため、キックバックでハンドルが大きく左右に取られる。300で4輪が設置していた上り坂ではタイヤが浮いてしまうが、しっかりとアクセルを踏み込めば上り切ることができる。決して快適ではないがクルマを操る楽しみを感じることができた。

70から乗り換えると250はまるで乗用車のように文化的だ。エンジン音や振動はほとんどなく、室内は300のような豪華さとは異なる上質な雰囲気に包まれている。フル液晶のメーター、画像を組み合わせて車体下を映し出す大型モニターなど、先進的ですらある。泥で汚れた靴で車内に乗り込むには少し抵抗を覚えたが、走り出しても乗用車のような印象は変わらない。ランクル初のEPSによってハンドルは驚くほどに軽い。70ではハンドルを取られながらも乗り切った悪路を、250は電子制御を駆使して何事もなかったようにスイスイと進んでいく。

250のボディサイズは、実質的な先代モデル「プラド」から全長・全幅ともに10cmほど大きくなった。外装デザインは、特に丸目型ヘッドライトを採用する「ファーストエディション」が70に似ているが、サイズは同じプラットフォームを採用する300に近い。ただ、フロントスタビライザーを車軸の後ろに配置したことでオーバーハングが300より短くなったこと、四角いボディ形状と低いベルトラインで視界が広がったことで取り回しはかなり良好だ。

悪路走破性と快適性を高い次元で両立した250は、最新で最良のランクルといえ、シリーズ量販車種となるのは間違いなさそうだ。ただ、価格設定は520万~785万円(ファーストエディション含む)と、300(510万~800万円)と同水準となり、ワングレード展開の70(480万円)とも大きく変わらない。ランクルシリーズに価格的なヒエラルキーはなく、ユーザーはキャラクターが異なる3車種を好みに合わせて選ぶことになる。

(福井 友則)