日産自動車が下請事業者への支払代金を不当に減額したとして、公正取引委員会は近く日産に再発防止などを求める勧告を出す方針を固めた。関係者への取材で分かった。対象の下請事業者は約30社で合計30億円ほどの減額規模に上るという。発注時に定めた支払代金を不当に減額する下請法違反としては過去最高額になる見通しだ。

 関係者によると、日産は少なくとも数年間にわたり、契約時に決めた金額から支払代金を数%減額していた。下請事業者は日産との取引に悪影響が出ることを恐れ、減額要求を受け入れていたとみられる。

 下請法では、発注時に決めた金額を減額要求することを禁じている。下請事業者に責任がある場合などは適用除外になるケースもあるが、日産は合理的な理由がないにも関わらず、減額を要請していた。

 日産は「公正取引委員会から指摘、並びに調査を受け、公取委からの最終的な結果を待っているところ」とのコメントを出した。下請事業者から不当に得た「一時金」は全額返金済みという。不当な減額による下請法違反の過去最高額は、日本生活協同組合連合会が2012年に認定された約25億6千万円だった。

 公取委は、原材料やエネルギーコスト、労務費の上昇も背景に発注企業から受注企業への価格転嫁を促している。自動車業界もサプライチェーン(供給網)全体への価格転嫁の波及を目指し、日本自動車工業会(片山正則会長)と日本自動車部品工業会(有馬浩二会長)が連携し、対策を進めていたところだった。