ブリヂストンは、2026年度までの新中期経営計画でプレミアムタイヤ事業をグローバルで強化し、調整後営業利益で23年比1.3倍の6400億円、最重要指標とする投下資本利益率(ROIC)は10%を目指す。タイヤの真円度を3割高める技術を世界の工場に導入する。ソリューション事業もプレミアムタイヤと組み合わせて展開し、外部環境の影響を受けにくい高収益体質を目指す。
市販タイヤの需要が伸び悩む中、乗用車用の高インチプレミアムタイヤは車両の大型化や電動化を背景に堅調に推移する見込み。同社は26年に乗用車用の高インチ市販プレミアムタイヤの販売本数を23年比1.4倍に増やすほか、採算基準を「ROIC5.5%」とし、未達のタイヤ事業をなくす。中国のトラック・バス用タイヤから撤退し、欧州では不採算品の削減と小売り事業の再編を急ぐ。
プレミアム戦略の中核を担うのが、タイヤを「薄く軽くまるく」作る設計基盤技術「エンライトン」だ。26年には過半、30年にほぼ全ての商品に搭載する。製造工程も進化させ、真円度を30%高める成型技術を世界の20工場に導入していく。タイヤの骨格部や補強ベルトを共有化するモジュール戦略「BCMA」を組み合わせ、接地面(トレッド)で差別化した独自製品を展開していく。BCMAはコストと環境負荷の低減が期待できる。栃木工場のほか、タイ、スペイン、カナダの計4拠点をモデル工場とし、26年に展開率50%を目指す。
ソリューション事業は、30年に総売上高の約4割にあたる2兆円を目指す。まずは26年に調整後営業利益率8%を目指し、不採算サービスを取りやめる。プレミアムタイヤをベースに、摩耗や耐久性の予測技術、メンテナンス、接地面の貼り替え(リトレッド)などのサービスを組み合わせた、法人向け「モビリティテック事業」に力を入れる。
環境面では、最終年度に二酸化炭素(CO2)排出量を11年比50%以上減、再生可能エネルギー比率70%以上を目指す。タイヤ原材料に占める再生資源・再生可能資源(MCN)の使用比率も50年100%に向け、26年に39%以上とする。
こうした戦略事業には、3年間で約1.4兆円の設備投資額の過半にあたる7800億円を投じる。石橋秀一グローバルCEO(最高執行責任者)は「持続可能なソリューション企業を目指し、『最高の品質で社会に貢献』の使命は変わらない。これに沿って経営を進める」と語った。