自工会の新執行体制がスタート(前列左が片山新会長、前列中央が豊田前会長)

 日本自動車工業会(自工会)の会長にいすゞ自動車の片山正則会長兼最高経営責任者(CEO)が1月1日付で就任した。1967年に自工会が発足して以来、商用車メーカーのトップが就任するのは片山氏が初めてだ。自動車業界として取り組んでいかなければならない社会課題はあまたあり、特に「物流の2024年問題」は喫緊の課題として取り組んでいかなければならない。商用車メーカーのトップでもある片山新会長のかじ取りで課題解決に向けて取り組んでいく。

 12月末で退任した豊田章男前会長(トヨタ自動車会長)は、2018年から会長を務めてきた。23年1月末には「企業の執行トップが会長を務める」という内規を理由に豊田氏が辞意を表明したが、各理事からの続投要請を踏まえ、1年限りで会長職を続けることになった。会長は通常、5月の総会で交代するが、2024年問題などに早期対応していくため1月に前倒ししてトップを交代することになった。

 これまで豊田前会長は、組織のスリム化をはじめ自工会改革をリードしてきた。昨年11月末の会見で副会長に就いてからの計13年間を振り返り、「モビリティ産業を支える業界団体としての土台はつくることができた」と語っていた。片山新会長は豊田前会長からバトンを引き継いで、自動車業界の課題に対応する。

 自工会も参加する日本経済団体連合会(経団連)のモビリティ委員会は、数多くある自動車業界の課題の中で取り立てて緊急性の高い課題について「7つの課題」として委員会の中で提示した。①物流・商用・移動の高付加価値化/効率化②電動車普及のための社会基盤整備③国産電池・半導体の国際競争力確保④重要資源の安定調達、強靭な供給網の構築⑤国内投資を促進する通商政策⑥競争力のあるクリーンエネルギー⑦業界をまたいだデータ連携や部品トレーサビリティーの基盤構築―だ。

 これら7つの課題に対し、新執行体制で対処していくことになる。新執行体制は、片山新会長を筆頭に、6人の副会長で構成する。各課題を担うリーダーを決めて、それぞれ取り組んでいく。

 カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)については、多様な動力源から選択できる「マルチパスウェイ」で乗り越える。「敵は炭素であり、内燃機関ではない」と、これまでの方針を継承する。片山新会長は「今後の2年間で今まで以上に地球環境保護への責任を果たしていく」と話す。

 昨年秋には「東京モーターショー」から名称を一新し、「ジャパンモビリティショー」が開催された。総来場者数は、目標の100万人を上回る111万2千人に達した。参加企業も、過去最高の500社に上った。片山新会長は「ジャパンモビリティショーで付いた種火(たねび)を拡大したい」と、毎年の開催に向けても意欲を示す。

 片山新会長は「この立場に就任できることを誇りに思う。一方、100年に1度という産業の変革の真っただ中で、会長のタスキを受け取る、その重責に身の引き締まる思いだ」と語る。商用車を中心に物流課題の解消に向けた取り組みについては「物流データや帳票類のデジタル化」「自動運転」「ドライバー層の拡大」などに取り組んでいく。