電動車向け軸受の引き合いは堅調だ

 日本精工は、eアクスル用ベアリングとSUV用テーパーローラー型ハブベアリング、電動油圧ブレーキ用ボールねじを自動車事業の成長3本柱と位置づけ、2024年度からの3年間で世界生産能力を増強する。国内外の生産拠点に合わせて約100億円を投じ、受注に応じて生産能力を増やしていく。電動車シフトで生まれる新たな軸受需要を積極的に取り込み、内燃機関向けの需要減をカバーして持続的な成長を目指す。

 市井明俊社長は「(24年度からの)中期でeアクスル用のベアリングやテーパーハブ、新製品などで自動車事業のポートフォリオを少しずつ変えていく」と語った。

 eアクスルは電気自動車(EV)の基幹部品として需要が急拡大している。同社は、eアクスルの高出力・高電圧化に伴う金属部品の腐食(電食)を防ぐ耐電食製品ベアリング群を展開しており、このほど自動車メーカーに新規採用されたため、24年度から量産投資に踏み切る。具体的な投資先は明らかにしていないが、国内や米中に持つ生産拠点が対象とみられる。

 テーパーローラーベアリング(円すいころ軸受)は、同サイズの玉軸受と比べて剛性が高く、車重が重いSUVやピックアップトラックに用いられる。こうした車型は需要が伸びており、同社も高い信頼性や低摩擦力が強みの自社製品を売り込みつつ、供給力を整えていく。また、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術の普及と合わせ、搭載車種が増えている電動油圧ブレーキシステム用ボールねじの生産体制も拡充していく考えだ。

 日本精工は、26年度に自動車事業の売上高を4100億円に増やす目標を持つが、今期見通し(4140億円)で達成が視野に入った。ただ、部門利益見通しは165億円と目標(285億円)の6割にとどまる。成長が見込めるeアクスルやSUV用のベアリングなどを拡販し、目標達成を目指す。