林新之助社長

 デンソーは15日、成長戦略領域と位置づける事業について、2030年度の売上高を電動化で22年度比2.5倍の1兆7千億円、先進運転支援システム(ADAS)で同2.6倍の1兆円を目指すと発表した。これらの事業を支える基盤として、半導体事業は30年度までに5千億円を投じ、35年度の事業規模を同3倍の7千億円に、ソフトウエア事業も人員を30年度に同1.5倍の1万8千人にまで増やし、事業規模を35年度に同4倍の8千億円とする。エネルギーや農業など新規事業は35年度の売上比率で2割を目指す。

 同日、オンラインで開いた事業説明会で明らかにした。22年12月に公表した25年度目標に対し、電動化部門の売上高を2千億円積み増して1兆2千億円とし、全体の売上高は3千億円増の7兆円に増やした。松井靖副社長は「インバーターや熱マネジメントシステムなどの拡販が順調に進み、円安効果の追い風もある」と説明した。

 こうした状況を踏まえ、30年度目標を新たに設定した。電動化関連では、競争力の向上や品ぞろえの拡充、開発・生産体制の強化で拡販を目指す。基幹部品のインバーターは、22年度で全体の10%弱だった電気自動車(EV)向けを30年度には半数以上とし、海外向け比率も35%から58%まで高める方針だ。マザー工場である安城製作所(愛知県安城市)を中心に世界規模で生産体制を整える。

 ADAS関連では「グローバルセーフティパッケージ(GSP)」の次世代機に加え、車室内の様子を認識する「ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)」、車外のインフラと連携した「三位一体」技術を確立する。30年度には、こうした技術で防げる「事故カバー率」を80%とし、売上高でも1兆円を目指す。電動化とADASがけん引し、30年の全体の売上高は同36%増の7兆5千億円を見通す。

 半導体とソフト開発も加速する。EV向けは、平置両面冷却器や炭化ケイ素(SiC)の内製技術などによって商品力を強化する。ソフトでは、車両の機能更新や社会インフラとの連携に欠かせない大規模統合電子制御ユニット(ECU)の開発を強化。生成AI(人工知能)なども活用し、開発効率を2倍に高める。

 新規事業では「SOEC(固体酸化物形水電解用セル)」などの水素事業や工場自動化(FA)事業、農作業の自動化を柱とした「食農事業」に乗り出し、30年度に3千億円の売上高を目指す。

 林新之助社長は「デンソーの理念である『環境』『安心』に基づき、モビリティ社会全体の価値を最大化するのが新体制のコミットメントだ」と語った。