個性豊かなサークル部員をまとめる山田さん
迅速かつ正確な修理を可能にする車イスカルテ
車イスの修理指導の様子
東日本大震災の復興支援として、岩手県立宮古商工高等学校の生徒へも修理指導を毎年実施

 豊田合成は、第2回CSP大賞2022の選考委員特別賞を受賞した。1996年以降、社内有志のボランティアサークル「車イスドクターズ」が同社近隣の老人ホームや各地域の社会福祉協議会などを毎月訪問し、年間で500台以上の車イスを修理し続けてきた活動が評価された。

 社会貢献活動が活発な同社において、車イスドクターズは社内で最も歴史が長いボランティアサークルで、生産現場領域から技術系まで幅広い部門から個性豊かな26人の社員が在籍する。

 主な修理内容は、ブレーキやフットペダルの調整、パンク修理だが、さすがに「ものづくり企業」の底力で、結局何でも直してしまうという。修理にとどまらず、納車時に利用者に応じて空気圧を調整したり、きれいに磨いて返却するなど、サークルメンバーの心意気が光る。

 2004年以降このサークルの事務局を務めている総務部社会貢献推進センターの山田史子さんは「サークル部員数の低迷や修理先に部品を用意してもらう難しさ、訪問先の施設にいかに信頼してもらうかなど大変だったが、部員の人柄の良さに助けられた」と当時を振り返る。

 限られた時間内で修理台数を増やすには作業効率の向上が必須となる。山田さんは自ら「車イスカルテ」を考案し、修理の前段階で施設側が求める修理箇所を明確にすることで迅速な修理対応を可能にした。

 受賞を契機に、メディアで紹介される機会が増えたほか、通常のサークル活動では対応していない一般個人の車イスユーザーからも修理を依頼されるなど反響があった。また、社内で活動の認知度が高まったことで、新入社員など新たな参加者が増えたという。「実際にやってみたら面白い」との感想は、サークルメンバーを勇気づけた。受賞により、この活動の位置づけが社内報案件から広報部案件に「格上げ」されたとか。

 サークルメンバーの高齢化が進む中、若手社員への積極的な勧誘や、活動をけん引するリーダー、サブリーダー制を新たに設けることで、組織的かつ継続的な活動が可能な環境を整えてきた。

 今後の活動目標について山田さんは「現在は本社近隣での活動にとどまっているが、全国に展開する当社の各工場ごとにサークルを立ち上げることで訪問先施設数を増やしていきたい」と意気込む。